#14久保田脳神経外科クリニック
https://www.kubota-bc.jp/
愛知県春日井市大留町9-3-2
院長久保田 鉄也先生
脳神経外科医として経験を積み開業
私は1987年に医師となり、福井医科大学脳神経外科に入局後は脳出血、くも膜下出血、頭頸部外傷、脳腫瘍などの手術治療、脳梗塞の治療などを中心とする急性期医療に携わってきました。その後、複数の民間病院で経験を積み、名古屋徳洲会総合病院 副院長を務めたのち、2005年に当院を開設しています。
当院では勤務医時代の経験を活かし、徳洲会総合病院時代に診ていた患者さんや地域基幹病院から紹介を受けた方などを対象として、脳卒中の再発予防に力を入れています。ほかにもエコーやCT、脳波検査などを駆使しながら、頭痛、めまい、ふらつきからパーキンソン病、脊髄小脳変性症などの神経疾患、事故による頭部外傷なども診ています。
現在、当院を受診中の患者さんは延べ1,500〜1,600名、1日外来患者数は50〜60名にのぼります。年齢層は受診目的によりさまざまですが、脳卒中関連に絞ると60〜80歳代と高齢患者さんが中心です。
スタッフは看護師8名、理学療法士2名、作業療法士1名、放射線技師1名、介護福祉士1名、事務職4名の陣容で、それぞれの専門性を集約した包括的支援の提供をめざしています。
クリニックにおける脳卒中の二次予防の現状
生活習慣に乱れのある患者さんを診ていると、内臓脂肪の蓄積を介してインスリン抵抗性をきたし、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などとともに、高尿酸血症も合併しているケースは少なくありません。やはり高尿酸血症も動脈硬化性疾患の危険因子であり、脳卒中の発症に関連するのだなと痛感します。当院を受診中の患者さんのなかでも、高尿酸血症を合併して尿酸降下薬を処方している方は50〜60名にのぼり、日々血清尿酸値に関する説明を行っている状況です。
また、脳卒中の二次予防は基礎疾患の治療や生活習慣の改善が中心となりますが、そのなかで腎機能低下は脳血管疾患の発症のみならず、発症後の予後不良因子であることも報告1)−3)されており、注視すべき危険因子の1つです。そして、この腎機能低下が血清尿酸値高値と関連することはよく知られており、脳卒中の二次予防においては、血圧管理、脂質管理、血糖管理に加え、血清尿酸値の管理も重要になると認識しています。
そして生活習慣に関する具体的な介入として、食生活や運動、飲酒、肥満、喫煙などに関する指導を行いますが、これらはおのずと高尿酸血症の改善にも役立つと考えています。たとえば、血清尿酸値が高い患者さんはアルコールの問題を抱えている方が多いですが、脳卒中の二次予防として飲酒に関する指導を行うことを通じて自然に高尿酸血症の飲酒の問題にも介入しています。
そのうえで、必要があると判断すれば、食生活においてプリン体の多い食材は避けるといった高尿酸血症に特異的な指導を行い、血清尿酸値について患者さんの意識や関心を高めるような説明および指導を行っています。
多剤併用患者さんにおける尿酸降下薬処方のコツ
当院を受診する患者さんは基礎疾患に応じ、多くが複数の薬剤を服用しています。特に高齢者ではポリファーマシー状態となり、脳卒中の再発について強い恐怖心を抱いているものの、服用する薬剤が増えていくことに抵抗を覚える患者さんは少なくありません。
そのなかで、脳卒中の二次予防に関してエビデンスのある薬剤を確実に服用してもらうことを優先すると、尿酸降下薬の処方はいったん見送らざるを得ないこともあります。特に降圧薬などのアドヒアランスが不良な患者さんでは、尿酸降下薬の処方は様子見をすることは珍しくありません。
ある日突然、痛風発作を起こして当院に駆け込んでくる患者さんもいます。痛みに懲りた患者さんは、比較的スムーズに尿酸降下薬の処方を受け入れてくれますから、一定期間服用するとガイドライン4)が定める血清尿酸値の目標値である7.0mg/dLをきることは多く経験しています。
そのような経験から尿酸降下薬の効果は実感しており、血圧、血糖値、コレステロールのコントロールが良好になった患者さんには、「次は血清尿酸値を下げましょう」ともちかけることもあります。
尿酸降下薬に関しては、当院では尿酸生成抑制薬を中心に使用しており、そのなかでの使い分けとしては、患者さんがすでに処方されている薬剤の投与回数に合わせるのが基本です。1日1回処方の薬剤が中心の患者さんなら尿酸降下薬も1日1回のもの、すでに1日2回の薬剤を多く服用している方なら、そこに1日2回の尿酸降下薬を追加してもご本人の抵抗は小さい印象です。薬剤は有効性や副作用面なども考慮しますが、大事なことはやはり患者さん自身が飲みやすいものを選ぶことであり、それがアドヒアランスの維持につながると考えています。
脳神経外科医としての今後の展望
開業以来、脳神経外科専門医として多くの患者さんを診てきたなかで感じるのが、片頭痛で受診する患者さんの急増です。一般的に、片頭痛は女性に多いといわれていますが、当院の患者さんに性差はなく、年齢層も幅広い印象です。増加の背景にある要因は不明ですが、私自身は患者さんの生活状況を聴き取るなかでスマートフォンの使用時間が増えたことも一因ではないかと推察しています。
学校にいけない、仕事にいけないという患者さんは多く、日常生活に大きな支障をもたらす疾患ですが、幸いなことに急性期治療、予防治療のいずれにおいても画期的な新薬が登場しています。また、難治性の患者さんに対しても効果が期待できて、治療の選択肢は広がりつつあります。
その他、脳卒中後遺症の上下肢痙縮に対するボツリヌス療法についても、痙縮のみならず機能改善をもたらす可能性があると期待しており、これらの新規治療で当院を受診する患者さんのQOL向上に貢献していきたいと思います。
また、脳卒中は重度の障害や体力低下を呈しやすく、患者さん自身も大変ですが、介護をする側の苦労も相当なものです。患者さんだけでなく、介護をする側の人もいかにして支えるかを考えると、われわれができることとしてはやはり訪問診療、訪問看護だと思います。
そこで現在、院内では通所リハビリテーションを提供し、地域には訪問診療に出向き、地域の訪問看護ステーションと連携して在宅療養のお手伝いをする活動を展開しています(表)。1人でも多くの患者さんが後遺症を軽減し、家庭復帰や社会復帰ができるよう、今後も力と知恵を尽くしていきたいと思います。
References
1)MacWalter RS,et al.Stroke.2002;33:1630-5.
2)Yahalom G,et al.Stroke.2009;40:1296-303.
3)Molshatzki N,et al.Cerebrovasc Dis.2011;31:271-7.
4)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年改訂).東京:診断と治療社;2019.