Expertに聞く 痛風診療の発展をめざして

各先生のご所属等は掲載当時のものです。

Vol.1

一般の方々から臨床家、研究者まであまねく活動を支援する痛風・尿酸財団

痛風・尿酸財団は、痛風と尿酸およびそれに関連する疾患の研究助成を主目的とするユニークな公益財団法人である。今回は、2020 年6 月に理事長に就任された山中寿先生にインタビューし、日本の痛風・高尿酸血症分野の研究の進歩における当財団の貢献についてお話いただいた。

高度成長期以降に増えてきたわが国では歴史の浅い病気
- 痛風 -

痛風は紀元前から記載のある歴史の長い病気です。西洋では歴史上の名だたる人物が痛風の痛みに悩まされたと記載されています。一方日本では、痛風は明治以前にはないとされている病気です。明治時代に来日したドイツ人のベルツ博士は、草津温泉で日本人の足を見ながら、「ドイツの温泉には痛風患者さんがたくさんおられますが、ここにはおられませんね」と驚かれていたそうです。

痛風が日本で初めて病気として記載されたのは1931年(昭和6年)で、増えてきたのは戦後、特に1960年代の高度成長期以降になります。私は、痛風は社会が豊かになると増え、たとえば戦争などで社会が貧しくなると減る、いわゆる時代がつくる病気、本当の意味での現代病だと思っています。

痛風に関する患者会や学会が発足
その流れを汲み誕生した財団法人

高度成長期を迎え、日本でも痛風が増えるなか、虎の門病院におられた同法人創始者で初代理事長の御巫清允(みかなぎ きよのぶ)先生をはじめ、東京大学物療内科や慈恵医科大学腎臓内科が中心となってその診療に力を入れておられました。しかし、1960年代当時、痛風の診療は、全国どこでも受けられる状況にはありませんでした。

そこで、1969年に痛風患者さんらが主体となり、痛風および高尿酸血症についての正しい知識と治療のあり方、さらには関連する健康問題の啓発と、全国の痛風診療機関の情報提供を主目的とした患者会『痛風友の会』が結成され、活動を開始しました。また、御巫先生が1963年に510名の痛風症例をまとめて報告されて以降、日本における痛風に関する本格的な研究が始まりました。1977年には、基礎や臨床の先生方が集まりサイエンスを論じる学術団体として『尿酸研究会』が発足し、現在の『日本痛風・尿酸核酸学会』に至っています。これら2つの会の流れを汲みつつ、1984年に御巫先生と西岡先生らの尽力により、財団法人痛風研究会が発足し、2009年に公益財団法人として移行認可されました。

役割の柱は、研究助成と医療関係者や一般の方々の啓発

すでに40年近く活動を続けている公益財団法人痛風・尿酸財団ですが、その役割は発足当初より変わらず、①痛風と尿酸およびそれに関連する疾患領域の研究者に対する研究助成、②当該領域の現状と進歩を臨床に還元するための一般医師や医療関係者を対象とした研修会の開催、③一般の人々への当該領域の啓発(市民公開講座の開催など)と全国の痛風協力医療機関に関する情報提供の3つです。

これらの役割を担う際のスタンスは、財団法人の時代を含め、公益財団法人に移行してからはなお一層、読んで字のごとく『公益』という限り、一部の偏った人たちだけに利益を供与することなく、幅広い人々のあまねく活動を支援することで貫いています。

たとえば、研究に関しては日本痛風・尿酸核酸学会の学術活動を包含しつつも、あらゆる研究者の「痛風と尿酸およびそれに関連する疾患」に関わる医学生物学の横断的、根源的かつ重要な研究に対して助成しています。尿酸やその生成系であるプリン代謝、排泄系である腎トランスポーターはすべての生命維持にとり基本的なメカニズムで、医学生物学における多くの分野が該当します。毎年、多方面にわたる関連分野から40~50題前後の演題の応募をいただき、外部委員を含む選考委員会の選考により選ばれた13~15題ほどの優れた研究に助成を行っています。2020年度の研究助成対象の筆頭申請者の専門は人間科学、ゲノム解析、再生医療、生命医科学、薬学、分子生体制御など多岐にわたり、テーマも基礎系の萌芽的な研究を含めてさまざまです()1)


令和2年度研究助成対象者一覧表

文献1)より引用

また、一般医師や医療関係者を対象とした研修会は毎年9月に開催し、例年100~150名の参加があります。これはニュースソースが限られている一般医師や医療関係者に対して痛風に対する知識をアップデートしていただくことを目的としています。ただし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、2020年度の研修会は講演資料を用いた自主学習としました。2021年度の研修会は、一堂に会して議論や質疑応答ができる場を提供するために、9月12日(日)にWeb開催の予定です。

痛風・尿酸の研究と診療の発展に
貢献し続けられるように

『痛風友の会』、『日本痛風・尿酸核酸学会』、『公益財団法人痛風・尿酸財団』という団体がそれぞれの位置づけや役割を明確にしながら存在していることが、日本における痛風や尿酸の研究を加速し、診療体制の充実に貢献していると考えています。今や日本は、痛風とその基礎病態である高尿酸血症に関する世界の研究をリードし、ここ10年間に世界で発売された4つの新しい尿酸降下薬のうち3つが日本発です。2002年に、日本は世界に先駆けて、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを策定しています。日本の痛風診療のレベルは世界トップクラスで、重症の痛風患者さんは著減しています。

こうしたことは、一重に先進的で、先見的な慧眼をもった多くの先人がいらっしゃったからだと思っています。そこで、その灯火を絶やさぬよう、これからも先進性のある尿酸や核酸代謝の研究を助成することにより、その裾野が日本全体に広がるように尽力していきたいと考えています。また、研修会は基礎知識と最近のアップデートを学べる場としてその内容を、痛風協力医療機関は少しでも数を増やしていき一般の方々への情報提供として役立つように充実させていきます。

機能的で楽しめるホームページに
~助成や研修会への応募、寄附、医療機関検索などに活用して~

公益財団法人痛風・尿酸財団のホームページ()2)も一新させていただきました。トップページには、私が毎月初めに更新している『理事長通信』、前理事長の鎌谷先生が担当されていた理事長通信を移行するとともに新たなコラムを追加する『医学の地平線』、当該領域で活躍されている先生方に痛風・尿酸に関連した最新情報をご執筆いただく『痛風・尿酸ニュース』の3つのコーナーを揃えています。


公益財団法人痛風・尿酸財団のホームページ

文献2)より引用

助成や研修会への応募も、痛風協力医療機関への申請もこちらのホームページから可能です。こちらのホームページを活用していただくとともに、なにより、寄附をお願いしたいと思います。寄附はすべて研究費に充当いたします。寄附なくして基礎研究を支えることは難しくなっておりますので、個人の資格での寄付を何卒よろしくお願いします。

References
1) 公益財団法人痛風・尿酸財団. 令和2年度研究助成対象者一覧表.
https://www.tufu.or.jp/wp/wp-content/uploads/subsidy_target2020.pdf
2) 公益財団法人痛風・尿酸財団ホームページ.
https://www.tufu.or.jp