施設紹介

#13医療法人南谷継風会
南谷クリニック

https://www.minamitani-c.or.jp/
大阪府豊中市岡町北1-2-4

理事長 / 院長南谷 直人先生

365日診療を行うクリニックとして開院

当院は1995年、大阪府豊中市の閑静な住宅街のなかに年中無休の内科・整形外科クリニックとして開院しました。クリニックで365日診療を行うことは、全国でも初の試みだったのではないかと思います。病気に休みはありません。地域住民の健康を守るにはどうすればよいか、私自身が患者だったらどうしてほしいかを考えると、おのずと無休とすることを選択しました。

1996年には土日祝日の夜間診療を、1997年には往診も開始して、診療体制を充実させていきました。次第に、クリニック周辺には次々とマンションが建ち並ぶようになり、当院を受診する患者さんの数も一気に増えていきました。

現在、開院から30年近くが経過して、カルテ番号はすでに12万台近くに達しています。診療科も地域住民のニーズに応えるべく、小児科、皮膚科、リハビリテーション科、放射線科を標榜して、1日の外来患者数は多いときで500名に上ります。

そのなかで高尿酸血症の患者さんは100名弱、うち1割程度は痛風を発症している印象です。年齢としては40〜50歳代の働き盛りの男性が中心で、多くは高血圧、糖尿病、脂質異常症を併存しています。

病態への理解を促す「見える化」の取り組み

高尿酸血症の患者さんの多くは痛風を恐れます。ただ幸いなことに、痛風そのもので死亡することはありません。一方で、血清尿酸値が高いままだと、無症候性であっても酸化ストレスを惹起し続け、血管を障害して動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重大なイベントや腎不全を呈します。

そのため、高尿酸血症の患者さんにはまずは食習慣を見直し、運動に取り組むよう指導しますが、皆さん痛風ばかり気にして、動脈硬化の進展やその先の致命的なイベントについてはピンとこないようです。痛風で受診した患者さんも、症状がおさまればいつの間にか通院しなくなることも珍しくありません。

そこで当院では、まずは動脈硬化の問題に関心をもってもらえるよう、患者さんの指導では「見える化」を重視しています。動脈硬化というと、実は患者さんはわかっているようで、血管がどのような状態になっているかまでは理解できていないからです。

そこで、頸動脈エコーの画像をみせて「ほら、プラークがいっぱい溜まっていますよ」と説明すると、皆さん画像に釘付けです。同時に上腕動脈血管指標(API)なども測定して、動脈硬化とは何かを数値から説明しています。3~4ヵ月に1回はeGFRやクレアチニンを測定して、高尿酸血症に併存するさまざまなリスクを理解してもらえるよう努めています。

高尿酸血症の治療におけるひと工夫

高尿酸血症の指導においては、まずは患者さんの食習慣や嗜好を確認します。肉が好きでよく食べるという方には、「週3回のところを週1回に」、「野菜も一緒に食べましょう」など、具体的なアドバイスを心がけています。お酒の好きな患者さんには、断酒は難しいでしょうから節酒を提案していますが、こちらはなかなか難しいものがありますね。

また、食事指導とあわせ運動習慣をつけることも推奨していますが、いきなり負荷の高い無酸素運動を行うと、血清尿酸値が急激に上昇するおそれがあります。そこで、まずはウォーキングなど軽めの有酸素運動をお勧めして、「とにかく継続することが大事」と繰り返しています。

高尿酸血症に対する薬物療法を開始すれば、男性ならひとまず7.0mg/dL以下、女性はもともと血清尿酸値が低めですから6.0mg/dL程度まで下げることをめざします。もちろん、痛風発作のある方なら6.0mg/dL以下が目標値となります。

ただ、目標値については、なるべく患者さん本人に伝えないようにしています。というのも、目標値を明確にすると、定期的な測定で低下していく数値をみて、「もう大丈夫」と勝手に治療を中断する方がいるからです。さらに、ひとたび目標値に到達すると、患者さんは「もう完全に治った」と思い込み、治療継続のモチベーションを失いがちです。

高尿酸血症の治療の最終ゴールは、心血管イベントの発症や透析導入を阻止することです。そこについての理解は、我々医師と患者さんの間で大きな乖離がありますが、真の治療ゴールはどこにあるのか、大事なことは繰り返し伝えるしかないと思っています。

健康寿命の延伸をめざしたサポートの提案

写真透析室

また、広く地域住民の健康に目を向ければ、わが国では急速なスピードで高齢化が進むなか、健康寿命の延伸がより重要な政策課題となっています。

実際、患者さんを診ていると、肉体寿命と健康寿命には、10年ぐらいの差がある印象を受けます。健康寿命をいかに肉体寿命に近づけるかを考えると、効果が大きいのは、継続的な運動です。ただ、多くの患者さんに運動を指導しても、「忙しい」、「場所がない」、「続かない」という声がよく聞かれました。ならば院内に運動ができる場を提供しようと、2008年にメディカルフィットネスを設けた経緯があります。

同年には、多彩なコースとオプション検査を備えた健診センターも開設しました。これにより、当院ではセンターにてなるべく早い段階で病気を発見し、クリニックで適切な治療を行うとともに、患者さんの運動習慣をサポートし、健康寿命の延伸をめざすまでが完結できることとなりました。

そして万が一、腎機能が廃絶しても、当院には血液浄化センターがあり、透析療法と適切な合併症対策が可能です。さらに、血液浄化センターではメディカルフィットネスのノウハウを駆使して、QOL向上をめざした運動療法にも取り組んでいます。透析となっても、患者さんにはイキイキと前向きにチャレンジできる人生を送ってほしいのです。このように、包括的に患者さんを支える機能を充実させていくことで、1人でも多くの地域住民の安心につながれば嬉しいですね。

さまざまな可能性で患者さんのQOL向上をめざす

写真メディカルフィットネス

臨床でのさまざまな経験を通じて今、私が関心を寄せているのは脳梗塞の再生医療です。脳梗塞はその多くが死亡を免れても麻痺などの後遺症を残す重篤な疾患であり、患者さんのQOLを大きく障害しますが、後遺症を直接的に回復できるような有効な治療法は、これまで存在していません。

しかし最近、北海道大学の研究グループが、自家骨髄間質幹細胞を脳内に移植する治験に乗り出すなど、障害された脳組織の再生をめざした研究が進んでいます。これら幹細胞のほか、細胞移植療法の移植源としてはiPS細胞も可能性があるでしょう。そうした最新の治療法に、たとえば当院のメディカルフィットネスなど既存治療をうまく組み合わせ、総合的に機能回復を図る治療戦略がいずれ現実となるかもしれません。

また、わが国ではようやく腎移植が年間2,000件を超えましたが、献腎移植の増加は望めない状況であり、iPS細胞を用いた腎臓再生にも期待したいところです。そのような再生医療による患者さんのQOL向上を夢みながら、臨床医としては当面、疾患の早期発見、早期治療で最善のアプローチを実現すべく、地域医療の中核を担うクリニックとしてさらに診療を充実させていきたいと思います。