施設紹介

#11医療法人 ほそや医院

https://www.hosoya-iin.or.jp/
岡山県井原市七日市町102

院長細谷 武史先生

生後1ヵ月から看取りまで年齢も疾患も幅広く対応


写真1キッズスペースを備えた待合室

当院は、1995年に現在名誉院長である父・細谷 正晴が内科・小児科・皮膚科を標榜して開業しました。父は理学部を出て民間企業に勤めた後に医師になった人で、私自身も農学部から医学部に入り直し、後に医師の道に進みました。高校生の頃は素直に医学部にいこうとは思えず、迷いの多い時期を過ごしましたが、今となっては医師の仕事が楽しく、「この道しかなかった、医師になってよかった」と思っています。2012年に、父と同じ岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学に入局しました。もともと地域医療に携わりたいという思いが強くあったため、いわば守備範囲の広い同科で経験を積み重ねたことが今につながっています。2021年4月に当院の院長に就任し、現在は名誉院長と私、呼吸器を専門とする副院長の3診体制で診療しています。患者さんは一般内科が6割、小児科2割、皮膚科2割となっており、生後1ヵ月のお子さんから現在は109歳の高齢の方まで、幅広い年齢層の方に来院いただいております。赤ちゃんの診療から看取りまで、年齢層も疾患も広範囲にフォローしているところが当院の特徴といえます。

患者さんには診療時間外でも困ったことがあったら連絡してもらえるよう、私や名誉院長の携帯電話の番号をお伝えしています。そう多くはありませんが、「子どもが洗剤を飲んでしまった」、「蜂に刺されたから診てほしい」といった電話がかかってくることもあり、そのように何でも相談してもらえることが“よいかかりつけ医”の在り方ではないかと考えています。時折、診断、治療に難渋することもあります。その場合は自ら調べたり、知り合いの先生方にご相談させていただいたりしておりますが、私自身、専門以外の疾患を勉強し、幅広い知識を得ることを楽しく感じており、“よいかかりつけ医”につながるものと考えております。

高尿酸血症の治療提案は患者さんに合わせ、根気よく丁寧に説明

患者さんは1日100〜110人ほど来院され、月間では2,700〜3,300人程度になります。高尿酸血症の患者さんは年間で約370人診療しており、季節にもよりますが痛風発作で来院される患者さんは月3~4人程度です。痛風患者さんには痛み止めの処方と採血をして、1週間後にその結果をお知らせするために来院いただきます。痛風発作時の採血では血清尿酸値が必ずしも高くは出ませんが、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』の治療アルゴリズムの図をお見せしながら薬物療法の必要性を説明し、血清尿酸値の目標値が6.0mg/dL以下であることもお伝えしています。無症候性の高尿酸血症の場合、治療については患者さん個々のニーズや性格を見極めながら提案し、薬物療法に抵抗のある患者さんには食事療法や運動療法を指導して、経過観察につなげられるようにしています。当院は私が糖尿病専門医であることから、持続皮下インスリン投与(CSII)やセンサー付きポンプ療法(SAP)なども行っている糖尿病の患者さんも多く、そのように合併症のある患者さんには尿酸値が高いことのリスクを伝えてから薬物療法を勧めます。糖尿病で定期的に通院されている高尿酸血症の患者さんで、尿酸降下薬も併せて服薬し良好にコントロールされている方では、クレアチニン値も維持されていることが多く、無症候性の高尿酸血症の治療も重要であると感じています。一方で、その必要性を患者さんに理解していただくことは容易ではなく、今後、新たな合併症が生じる可能性などを説明しますが、あまり強く勧めるとその後は来院されない患者さんもおられるため難しいところです。

生活指導は多くを求めずできそうな範囲で提案する

写真2検査室

飲酒指導には福山市民病院さんが考案された“アルコールの飲み方3か条”を活用しています。①1日の飲酒量は純アルコール量20g以下にする、②休肝日を2日以上つくる、③つまみの塩分に気をつけるというシンプルな内容で、そのなかでも特に②を強調しています。私自身、お酒が好きですので一口飲んでしまえば20gで止まらない気持ちはよくわかります。患者さんに共感をもって、飲まない日をつくる提案をしています。

運動については、疾患にかかわらず高齢になれば足の筋力が日常生活動作(ADL)の維持に重要となってきます。とはいえ、筋トレはハードルが高いため、自分のできる範囲で歩く時間を増やすように伝えています。その際に、「昨日の自分よりも1分でも2分でもいいから運動時間を増やしていく」ということと、「少ししんどいなというぐらいを続ける」ようにお伝えしています。地域柄、自動車での移動が中心で歩数が少ない方が多いですから、スーパーに徒歩でいくのは無理であっても、入店後に逆サイドから回っていくなど、できる限り歩数を増やせるようにアドバイスをしています。

2ヵ月に一度は管理栄養士さんに個別の栄養指導をお願いしています。コロナ禍の前は糖尿病教室も行っていましたが、現在は食事療法に特化した栄養教室を開催し、時節に合わせたテーマなどを設定して情報提供をしています。また、岡山県には岡山県糖尿病対策専門会議による“おかやま糖尿病サポーター”という認定制度があり、当院の看護師3人がこれを取得し、採血の際などに生活指導をしてくれています。

服薬継続には患者さんを褒めること

高尿酸血症は自覚症状がないことから治療継続の難しさがあり、食事療法や運動療法に地道に取り組まれる方は3割程度というのが実感です。服薬の継続についても、私自身、毎日薬を飲むことは大変だと思いますから、30日分の薬を処方した患者さんが「5錠残っている」とおっしゃった場合には、「5錠しかあまっていないんですか。ほとんど飲めているじゃないですか!」というように、とにかく患者さんを褒めて盛り上げるように心がけています。また、電子カルテでグラフが出せますので、血清尿酸値の数値が改善していることを視覚的にお見せすると、それが励みになるようです。

患者さんが笑顔になれる医院に

岡山大学でご指導いただいた、私と父の共通の恩師である小倉俊郎先生(岡山大学名誉教授、現・医療法人明芳会佐藤病院 院長)は、「病院は気持ちが下がる場所だから、楽しい雰囲気を心掛け、笑顔になって帰ってもらう」という持論をお持ちでした。当院もその通りのコンセプトで、患者さんとの会話を楽しむというスタンスで診療にあたっています。今後も、何でも相談いただける敷居の低い医院でありたいと思います。一方で、当院のある岡山県井原市は人口が年間約500人減少しており、より広域から当院を選んできていただける専門性の担保も重要と考えています。当院は私が糖尿病、副院長が呼吸器を得意として専門性の高い治療を提供しており、名誉院長ががんのターミナルケアなども手掛けています。間口の広さと専門性をバランスよく兼ね備え、地域の皆様の役に立つ医院であり続けたいと考えています。