#07医療法人社団 南越谷病院
クリニック
https://nankoshi-hosp.com/
埼玉県越谷南越谷1-4-63
院長清村 幸雄先生
副院長清村 咲子先生
地域のかかりつけ病院として40年
院長当院は、私の父である清村忠雄が1983年に開院し、もうすぐ40年になります。当院の所在する旧蒲生村(現・
2020年に私が2代目院長となり、カルテは30万番台にまで到達しましたが、そのなかで数百番台の患者さんからは、いまだ「清村さんが蒲生に病院をつくってくれた」と感謝されております。
現在、当院を受診するのはそうした父の代からの高齢者層に加え、越谷市が東京のベッドタウンとして発展したことで、若いファミリー層も増えました。診療圏も広く、平日は近隣住民が中心ですが、日曜になると埼玉県東部一帯から患者さんが来られます。開院当初はめずらしかった日曜診療も、徐々に手がける医療機関が増えてきましたが、整形外科と皮膚科を標榜する施設ではまだ珍しく、かなり遠方からも患者さんが来られています。
高尿酸血症診療の現状
院長当院では現在、内科、整形外科、リハビリテーション科、皮膚科、美容皮膚科、内科、アレルギー科を標榜しており、高尿酸血症の治療のため受診する患者さんは月に150〜170名にのぼります。
内科では、高血圧や脂質異常症など、何らかの生活習慣病を主病として高尿酸血症を併存する患者さんが多く、私が診る整形外科では稀に尿路結石による腰痛もありますが、痛風発作をきっかけとして高尿酸血症と診断されるケースがほとんどです。
初診であれば、偽痛風や化膿性関節炎などとの鑑別のため、血液検査やレントゲン検査をルーティンとし、病変部位が膝や肘で診断に難渋する場合は関節穿刺を行い、偏光顕微鏡により尿酸塩結晶の同定を試みています。他にも、皮膚科では単に「足の腫れ」を訴えて受診するケースもあり、院内には高尿酸血症の鑑別が必要な患者さんが多い印象です。そこは院内の内科、整形外科、皮膚科が密に連携し、適切な診断、治療につなげられるよう努めています。
関節炎の鑑別のコツ
副院長当院は生物学的製剤使用承認施設であり、皮膚科ではコントロール不良の乾癬難治例を多く受け入れています。特に乾癬性関節炎は関節破壊や変形をきたし、QOLが低下しやすいことから、早期に生物学的製剤の使用を考慮すべく他の関節炎との鑑別が重要となります。
足趾や足関節に現れると痛風関節炎と間違われやすいようですが、乾癬性関節炎の場合、7~8割で皮疹が先行します。皮疹は、銀白色のがさがさした鱗屑、境界明瞭な盛り上がった紅斑を呈し、頭皮や髪の生え際、肘や膝などが好発部位となるのが特徴です。点状陥凹などの爪病変が認められやすいことも、鑑別に役立つかもしれません。
院長痛風関節炎を疑っても、実際には血清尿酸値が7.5mg/dLと微妙で、C反応性蛋白(CRP)、好中球も上昇せず、診断に悩むケースは多いです。そんなとき、入念な問診は参考となります。というのも患者さん自身、原因について身に覚えがあることが多く、家族歴をはじめ既往歴、投薬歴や生活習慣などを細かく聴取していくことで診断につながるケースはよくあります。そのステップを経て高尿酸血症の診断に至ると、その後、患者さんとの信頼関係をうまく築きやすいように感じています。
高尿酸血症に対する治療介入の工夫
院長高尿酸血症と診断後、治療においてまずは生活習慣の改善を検討します。実際、肥満や生活習慣病の合併頻度は高いです。また、痛風発作が起きて来院した患者さんも、発作が消失すると、たいてい治療に消極的になります。
そこで私自身が、生活習慣の改善によりダイエットに成功したと告げると、みなさん身を乗り出し、詳細を聞こうとされますね。水を1日2L飲んで飲酒量を減らし、週3回30分の有酸素運動で15kg減量したのですが、目の前の医師からの成功談は患者さんにインパクトを与えるようです。
さらに、治療に関する患者さんの意欲を高めるため、私はビジュアルも活用しています。特に痛風結節の自壊した創部の写真は効果的で、浸出液や白色チョーク様の内容物をみせると、患者さんは「こうなるの?」とぎょっとされます。腎機能低下や心血管イベントのリスクについての説明も重要ですが、インパクトのあるビジュアルによる説明は、患者さんの治療意欲を引き出すうえで言葉以上の効果があるようです。
アドヒアランスを高めるコツ
副院長皮膚科領域でも、患者さんの治療意欲は大きな課題です。乾癬をはじめ、慢性皮膚疾患では外用薬による連日塗布が必要となるため、特に皮疹の範囲が広い患者さんは「手間がかかる」、「面倒」とアドヒアランスが低下しがちです。そこで私は初診時、患者さんの生活実態について細かく聴取し、外用指導の参考としています。
たとえば皮疹が手の届きにくい部位にある場合、患者さん自身で外用薬を塗ることはできません。そこで、同居者の有無やその関係性などを確認し、周囲の人たちを巻き込む形での治療を提案すると、アドヒアランスがよくなるケースは多いです。
院長協力者の存在がアドヒアランス向上のカギとなるのは、あらゆる領域に共通していえることだと思います。その点、古くから地域に根差したかかりつけ病院である当院は、多くのスタッフが患者さんの家族構成をよく把握しており、患者さんの父親、母親、あるいは子ども、誰が協力者となり得るかの見極めがつきます。高尿酸血症の治療においても、うまく周囲を巻き込んだ治療の提案を行うことで、より効果的な治療の実現につながると思います。
高尿酸血症治療のやりがい
院長高尿酸血症の患者さんは、働き盛りのストレスの多い世代です。帰宅して、1日の疲れを癒すべく冷蔵庫を覗くのが楽しみなのに、生活習慣との関連を指摘されるのは不本意な側面もあるのでしょう。患者さんは渋々といった表情で診察室に入って来られて、飲酒習慣について尋ねても「まあ、ときどき」といった調子です。
そこで「焼酎党ですか、ウイスキー党ですか」、「どんな飲み方が好きですか」と掘り下げていくと、たいてい「スタートはロング缶。その次は…」と正直に話してくれます。そこから、私自身の飲酒の嗜好やダイエット成功談も交えて対話を続けていくと、健康や生活について気になること、困っていることなど、患者さんの本音がぽろぽろと出てきます。
おそらく、患者さんも医師にいろいろ話したいのだと思います。逆に、そこを封印したまま生活指導や薬物療法を導入しても、継続は難しいでしょう。高尿酸血症は脳梗塞ほど病態がシビアではなく、骨折のように長期休職を余儀なくされることもなく、乾癬のように外見上の負担があるわけでもない。ただ、生活や人生で抱えている辛さが表出されやすく、治療はそれらの問題を患者さん自身が見つめ直すよいきっかけになる印象があります。そこに医師として介入し、患者さんの安らぎにつながれば医師冥利に尽きますし、高尿酸血症治療の魅力はそうした点にあるのかなと思います。
さらなる地域への貢献をめざして
院長1983年の開院以来、かかりつけ病院として多くの地域住民の健康を支えてきましたが、現在は地域の救急診療体制も整備され、日曜診療を提供する内科系施設も増えてきました。そうしたなか、当院としてこれから何ができるのか、あらためてその役割を考えていく必要があります。
そのなかの一つとして検討しているのが、超高齢社会において急増している変形性膝関節症(OA)に対する最新医療の追求です。現在、当院の整形外科ではOAの治療選択肢として、先進的再生医療である多⾎⼩板⾎漿(PRP)療法を提供しています。また、埼玉県立大学や順天堂大学と提携し、OAの歩行解析や新規バイオマーカーの研究などを進めていくことも決まっています。
父が「地域住民に病院を」と開院した当院ですが、これからは高度医療機関との連携により得られた知見を活かし、地域住民に身近な存在でありながらも大学病院レベルの専門的医療を提供する、患者さんにより信頼される病院をめざしたいと思います。