#05天神橋みやたけクリニック
https://www.miyatake-clinic.com/
大阪市北区天神橋3-2-13 大阪謄写館ビル2F
院長宮竹 英希先生
平均年齢40歳、働き盛りの世代を診る
当院は患者さんの幅広いニーズに対応すべく、私が専門とする肝臓疾患をはじめとして多様な内科系疾患の検査、診療を手がけています。さまざまな患者さんが来られますが、鉄道3線の乗り入れる大阪 南森町駅から徒歩3分のオフィス街に立地するため、仕事の合間や仕事帰りに通院される会社員の方が目立ちます。路地に入れば住宅街もありますが、近隣からも比較的若い世代が来院している印象です。患者さんの平均年齢は40歳、まさに働き盛りの世代を診ていると感じます。
そのうち高尿酸血症の診断名がついている方は700名、痛風の方は400名にのぼります。無症候性高尿酸血症の場合は未治療の方もいますが、痛風のある方はほぼ治療中です。仕事中心の生活となっている多忙な患者さんが多いため、個々に適した指導や治療を提案することを心がけています。
簡便な指標を用いて患者さんのやる気を高める
他の生活習慣病と同様に、高尿酸血症においても生活習慣の是正は重要です。当院では、血清尿酸値高値に介入する意義について痛風はもちろん、腎・尿路結石や心・脳血管イベントを抑制する観点から説明を行っていますが若い世代の患者さんの理解は良好だと感じます。前回受診時のデータもしっかり記憶しており指導しやすいという反面、なんといっても多忙な世代です。体重や歩数など、なるべく簡便な指標を用いて患者さんの頑張りを評価していますが、モチベーションの個人差は大きいと感じます。特に最近はコロナ禍となり、運動量が減って宅配を注文する機会が増えるなど、モチベーションが低下しやすい状況となっているのが懸念されます。
なかでもアルコールはそれ自体が血清尿酸値を上昇させるため、禁酒ができればよいのですが積極的に取り組む方は多くありません。飲酒の頻度について尋ねると、「週5日飲んでいます」ではなく「週2日は飲んでいません」と答える方もおられて、飲酒への後ろめたさと渇望が感じ取れます。
頑張って禁酒を続けている患者さんは全体の5%程度で、ほとんどの方が生活指導と並行して薬物療法が必要となります。
患者さんに合わせたきめ細やかな薬物療法を提案
薬物療法はガイドラインに従い、痛風の既往があれば血清尿酸値≦6.0mg/dLのコントロールを目指し、合併症があれば≧8.0mg/dL、無症候性の場合は≧9.0mg/dLで尿酸降下薬の服用を提案しています。痛風患者さんはもちろんですが、無症状の方も体調が気になって受診しているため、前向きに耳を傾けてくれます。
尿酸降下薬はこれまでの処方経験から尿酸生成抑制薬を基本として、患者さんの状態に応じて使い分けをしています。発作抑制には1日2回投与の薬剤を優先しますが、残薬を確認して、毎回「余っています」とおっしゃる方や「多忙で飲み忘れが心配」というような方には、1日1回投与の薬剤が適していると判断します。
また、尿酸降下薬は血清尿酸値をみながら維持量まで増量していきますが、なかにはそれを嫌がる患者さんもいるため、服用前にあらかじめ少量から始めて徐々に増やす薬であることを説明しておきます。治療の見通しを伝え、患者さんの納得を得てから治療を開始することが重要です。逆に、別のクリニックから転院してきた患者さんで、前医での処方に納得していれば、しばらく処方を調整せずに様子をみることもあります。薬物療法は患者さんごとにきめ細やかな対応をすることで、アドヒアランスの向上につながると思います。
患者さんをよく知り、信頼関係構築へ
多くの生活習慣病がそうであるように、高尿酸血症・痛風の治療も長期間継続していく必要があります。働き盛りの患者さんにとって毎月の通院は煩わしく、3ヵ月に1回だと前回受診時の記憶も薄れてくるでしょう。当院の通院頻度は2ヵ月に1回の年6回を基本としており、多忙ななかで治療を続けてもらうには患者さんの話をよく聞き、よく知ることが重要です。
幸い私は患者さんと世代が近く、診察室でさまざまな話をします。たとえば、患者さんの趣味はテニス、ダンス、ゴルフ、ジムなど多様ですが、いつから、どれくらい、誰と一緒にしているかという話から患者さんの生活背景が浮かび上がってきます。たわいのない会話のなかから治療に役立つような患者さんの生活パターンや考え方を把握し、指導に活かすことで、「先生は自分のことをよくわかってくれている」と信頼感が生まれます。そのような関係の醸成は治療に対するモチベーションの維持にもつながるようで、開業以来6年間ずっと通い続けてくれている患者さんもいます。
高尿酸血症を糸口に健康全般を支える
私は生活習慣病を広く診ていますが、そのなかでも高尿酸血症治療のやりがいを挙げるなら、痛風患者さんの痛みをなくすことです。働き盛りの患者さんにとって、ひとたび発作が起きれば歩くことすらままならず、仕事に大きな支障をきたしかねません。必死の形相で足を引きずりながら受診した患者さんが腫れや痛みから解放され、治療に取り組めるようになると医師として大きなやりがいを感じます。安心して仕事に打ち込む姿をみて、心の底から「よかったな」と思いますし、患者さんから感謝されるのも嬉しいものです。
また当院では、高尿酸血症・痛風で通院中の患者さんでも40歳以降の方を対象に年に1回、頸動脈エコーで動脈硬化のチェックを提案しています。検査自体は5〜10分で済みますし、動脈硬化が進んでいれば他の疾患もあわせて診ることが可能ですから、断られない限り積極的に行っています。自身の健康についてなかなか気を回すことができない働き盛りの世代の患者さんが、定期的な通院のついでに加齢とともに増えるさまざまな健康リスクをチェックできることは、大きなメリットになると思います。
疾患によって当院での対応が難しいと判断すれば、各領域の専門医に紹介しています。たとえば腎臓領域では、血清クレアチニン値が1.2〜1.3mg/dLとなった時点で大阪大学医学部時代の同期である腎臓専門医に紹介をしています。腎不全になる前に専門医に腎臓の精査と栄養指導を行ってもらい、逆紹介後は当院でフォローを続けます。場合によっては再紹介も検討しますが、早めに紹介しておくことで腎機能も安定して維持できている患者さんが多いです。
働き盛りの世代に寄り添う機能を強化
働き盛りの世代の患者さんを診ていると、高齢世代とは異なり、社会との関わりを含めて解決すべき問題が多いと痛感します。患者さんの多様なニーズに答えられるよう、私自身まだまだスキルアップすると同時に今後は診療体制をより充実させたいと思います。現状、当院では胃カメラ、腹部エコー、甲状腺エコー、頸動脈エコーを実施していますが、これらをすべて私自身が行い、コロナ禍になる前の外来受診者数は1日40〜50名でした。現在では受診抑制により新患が減り、今後どのように推移するかは不透明なところもありますが、心機一転、当院のウェブサイトをリニューアルし、胃カメラの専門サイトも開設予定です。
現在、体調に不安を抱えつつ受診をためらっている患者さんは多いと思います。そのような方が受診に前向きとなり、不安を払拭できるように当院の機能が役立てば幸いです。生活習慣病をはじめ、働き盛りの世代に必要な検査や治療をひと通り提供できるのが当院の強みです。2015年に開院して今年で7年目になりますが、今後はその機能をますます強化してより多くの患者さんの健康と生活をサポートしていきたいと思います。