薬剤師eye

#2 セイムス 針ヶ谷薬局

無菌調剤室を備えた針ヶ谷薬局

無菌調剤室を備え、医院と連携して在宅患者を訪問

薬局内に無菌調剤室を備える大きな目的は、患者さんが病院から退院されて自宅療養になった後も、入院中の処方内容をそのまま継続して輸液や注射薬を調製・提供をし、安定した自宅療養生活を送っていただくお手伝いをすることにあると思います。処方医や訪問看護師から薬局の輸液在庫や処方予定の混注内容を確認する電話相談があり、その日のうちに無菌室で混注して患者さんのお宅を訪問することもあります。

その際、各薬剤のインタビューフォームなどを参考に情報を収集し、処方された薬剤を混注した場合の液性や配合変化の可否を先生方と検討し、安全に投与できるかを判断します。無菌調剤室には高い品質管理およびリスク管理が求められますが、特にこれらは最も時間を費やす工程です。また、毎月2回実施される、医師・訪問看護師・ケアマネージャーなどとの医療関係者会議には、当薬局からも参加しています。そこでは在宅患者さんの疾患情報、体調変化、食事や排便など生活上の問題点を共有し、どのように対応していくべきか意見が交わされます。われわれ薬剤師は在宅患者さんの服薬状況を報告し、他職種の方々からの薬剤に関するさまざまな質問に答え、それが実際の処方に反映されることもあります。

地域包括ケアを行える薬局(地域連携薬局)のモデル店舗の1つ

地域連携薬局の課題は、今後さらに増えると予想される在宅医療への体制強化、それに伴う関係職種の方々との情報共有をより活発に行うことだと考えます。薬剤師は自宅訪問をしたときの残薬や服薬指導の内容を報告しますが、患者さんが実際に薬を服用している様子や服用後の体調変化を直接みることは少なく、患者情報が抜けている部分が課題と感じています。訪問看護師や介護ヘルパーの方々は患者さんが服薬に苦労していることや副作用の相談を受けているかもしれません。逆に、われわれ薬剤師が訪問看護師やケアマネージャーの方々へ報告が必要な患者さんの様子に気付くかもしれません。自分の専門分野以外、すなわち各専門職の不在の時間を、他の専門職が補い状況を共有できる関係性を築くことが解決法の1つだと思います。患者さんが抱えているさまざまな問題に気づき、積極的に動いて他職種との垣根なく連携できる薬剤師、それが理想の地域連携薬局を作っていくのではないでしょうか。