好きなことは意地で頑張り抜いた少年時代
小学校時代は少年野球に熱中し、そろばん、水泳など多くの習い事も掛け持ちしていました。特にそろばんは奈良県大会の小学校5・6年生部門で2位になったことがあり、計算は得意でしたね。今でもスライドをみて、すぐ数字を確認するクセが抜けません。野球はぎりぎりレギュラーになれるレベルでしたが、身体は鍛えられ、意地で頑張り抜いたのはよい経験だったと思います。
高校に進学すると、当時は経済に興味があり、新聞を読むのが好きだったので国家公務員になりたいと考えていました。進学校でもあり、周りは医学部進学を目指す生徒ばかりでした。高校1年生で東京大学理科三類の模試を受け、「もう今年でも受かるわ」と豪語する同級生もいて、大変なところに来たなと思いましたが、気がつけば私も医学部を目指すようになっていました。
徹底することを教えられた研修医時代
医学部時代は画像読影に興味をもったこともありましたが、実習が始まると、内科臨床の面白さに目覚めました。
私は卒後ストレートで入局する最後の世代でした。1年目で病棟管理を任されましたが、似たような症状の患者さんが入院してくるため、すっかり仕事ができる気になってしまいました。しかし、2・3年目の救急病院には腹痛、胸痛、薬物依存症など、大学病院では診たことがない症例が搬送されてきたので、一から教えてもらわざるを得ず、情けなかったですね。指導医からは「君のいうことは信用できない」、「医師10年までは未熟者。それを自覚するんだ」と叱咤され、一般臨床の基礎を叩きこまれました。「検査1つとっても、必要と思えばどんな障壁があっても徹底してやるんだ」といわれたことなど、今でもふと思い返します。
恩師との出会いから始まった尿酸研究
その後、大阪市立大学から兵庫医科大学に赴任し、尿酸研究の大家である山本徹也教授(現・社会福祉法人 大阪暁明館病院検診センター長)と出会ったことが、医師人生のターニングポイントとなりました。当時、尿酸については「数値を測ったことがあったかな」くらいの認識でしたが、山本先生の教え方は非常に面白く、いつの間にか尿酸研究の魅力にとりつかれてしまった次第です。山本先生のもとで尿酸値の上昇を抑制するPA-3乳酸菌の研究などに携わった後、大阪市立大学に戻り、現在は主にキサンチン酸化還元酵素(XOR)活性と生活習慣病との関連について研究しています。今後はXORが産生する活性酸素と動脈硬化、心血管イベントなどとの関連やXOR活性阻害薬によるアデノシン三リン酸(ATP)上昇と筋疾患への影響をテーマに研究を進めていくつもりです。
尿酸には酸化/抗酸化作用の二面性があり、それをどう解釈するかは誰も答えを見いだせていません。年齢や性別、肥満や糖尿病の有無などで群分けすれば何かみえてくるかもしれませんが、真理はどこにあるのだろうと思わせる興味深い領域です。
試練を楽しみに変えて前進の糧に
プライベートでは子どものころから変わらず、経済を考え、新聞を読むのが好きで、おすすめは日本経済新聞の「私の履歴書」というロングインタビューのコーナーです。さまざまなジャンルの国内外の著名人の人生を追体験できて、とても面白いですよ。登場者は成功者とは限らないのですが、すさまじい努力を重ねつつ、その波乱万丈を楽しんでいる様子が格好良いのです。しんどいことをしんどいと思ったら負け、同じ時間を過ごすならむしろ「楽しい試練」と捉えれば前に進めるんだと思わせてくれます。これから私自身の履歴書がどのように書き換えられていくかはわかりませんが、常に楽しむ気持ちを忘れず、研究を進めていきたいですね。