対談CrossTalk

Vol.6
市田 公美 先生 × 大山 博司 先生

高尿酸血症治療における新たな薬剤選択の考え方

痛風の通院患者数は125万人、高尿酸血症の潜在患者数はその10倍、1,000万人を超えると推定される。痛風・高尿酸血症は、他の生活習慣病との合併も報告されていることから、高尿酸血症における治療の重要性が増している。今回は高尿酸血症の病型分類などを考慮した薬剤選択について、痛風患者の診療と研究のエキスパートに解説いただいた。

市田先生

本日は痛風診療のエキスパートである大山先生より、両国東口クリニックにおける高尿酸血症患者の実臨床データを紹介いただきつつ、「高尿酸血症治療における新たな薬剤選択の考え方」をテーマにディスカッションできればと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

大山先生

よろしくお願いいたします。

高尿酸血症を取り巻く動向 ― 生活習慣病における位置づけ

市田先生

まず、痛風の疫学データについて紹介させていただきます。国民生活基礎調査によると、痛風の通院患者数は年々増加し、2019年で125万人に達しています1)。痛風の原因となる高尿酸血症の患者数はその約10倍と推定されていますので、1,000万人以上になります。一方、他の生活習慣病の通院患者数は、高血圧 1,562万人、脂質異常症 663万人、糖尿病 618万人、狭心症・心筋梗塞 223万人と算出されます1)。つまり、高尿酸血症は患者数が決して少なくない生活習慣病と位置づけられます。高尿酸血症に起因する病態として、痛風のほか、尿路結石、慢性腎臓病が挙げられます2)。さらに、高血圧や脂質異常症、肥満、インスリン抵抗性を基盤にもつことで、間接的にメタボリックシンドロームを合併しやすいことが考えられます2)

高尿酸血症治療と病型分類

市田先生

先ほどお話ししたように、痛風の原因であるのみならず、合併症が多いという観点からも、高尿酸血症の治療は重要だといえます。2011年以降、新たな尿酸生成抑制薬[非プリン型キサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬]や選択的尿酸再吸収阻害薬(selective urate reabsorption inhibitor:SURI)などの薬剤が発売され、治療薬選択の幅が非常に広がっています。そこで、薬剤選択の基準となる病型分類についてご説明します。

人間の身体では、食事からの摂取を含め1日700mgの尿酸が新たに産生され、3分の2が腎臓から、3分の1が腸管から排泄されます。高尿酸血症はこの体内における尿酸のバランスが崩れて血清尿酸値が上昇し、発症します。

最も多い病型は「排泄低下型」で、腎臓からの尿酸排泄効率の悪化が原因です。一方、「腎外排泄低下型」は、消化管からの尿酸排泄が低下した分、腎臓で排泄しようとするものの、追いつかなくなっている病態を指します。これに対し、「産生過剰型」は尿酸産生量が増加している病態です。「腎外排泄低下型」と「産生過剰型」は臨床上、区別することができないため、両方をあわせて「腎負荷型」と呼んでいます。なお、「排泄低下型」と「腎負荷型」を併せ持った「混合型」も存在します(図12)

これらの病型分類は実臨床ではどのような状態にあるのか、大山先生よりお話しいただけますか。

高尿酸血症の病態の分類

図1:高尿酸血症の病態の分類

文献2)より引用

大山先生

当施設における高尿酸血症患者の病型分類の実態についてお話しします(図23)。全体の病型分類をみると、「排泄低下型」が最多です。ある程度食事制限を行っていることも影響しているのか「腎負荷型」の割合が少なく、「混合型」も合わせると高尿酸血症患者の約9割に何らかの排泄障害があると考えています(図2A3)。年齢別では、60歳未満で「排泄低下型」が7~8割、「腎負荷型」は1割未満、「混合型」が2割程度です。60歳代では「排泄低下型」が6割、「腎負荷型」が2割弱、「混合型」が2割強でした(図2B3)

両国東口クリニックにおける高尿酸血症の病型分類(全体割合および年齢別割合)

図2:両国東口クリニックにおける高尿酸血症の病型分類(全体割合および年齢別割合)

文献3)より作図

市田先生

食事指導も影響して、「排泄低下型」の割合が増えているということでしょうか。

大山先生

はい。当施設は痛風専門外来なので、他の医療機関で食事指導を受けていたり、自ら食事制限を行ってから来院する患者が多いためだと考えています。アルコールも摂取をやめている患者が多いので、それも1つの要因だと思われます。

血清尿酸値と尿酸トランスポーター

市田先生

腎臓の近位尿細管細胞に発現する尿酸トランスポーターとして、管腔側に位置する尿酸トランスポーター1(urate transporter 1:URAT1)と血管側に位置するglucose transporter9(GLUT9)の2つが尿酸再吸収に働いています。一方、尿酸分泌に働くトランスポーターとしてATP-binding cassette transporter G2(ABCG2)が同定され、腎だけでなく腸管でも尿酸排泄の役割を担っています。痛風患者では、尿酸が排出されにくくなるABCG2遺伝子変異が認められます。特に重要な2つの遺伝子変異は、尿酸排泄能を完全に消失させるQ126Xと機能を半減させるQ141Kで、日本人では他の人種と比較して高い頻度でみられます4)。ただし、日本人では諸外国と比較して肥満の程度が軽いため、痛風・高尿酸血症の発症頻度が抑えられているのだと考えられます。また、我々の研究ではABCG2の機能低下が肥満や大量飲酒以上に高尿酸血症発症に影響を及ぼしていることが示唆されました(図35)

種々の因子の高尿酸血症発症への影響

図3:種々の因子の高尿酸血症発症への影響

文献5)より作図

高尿酸血症治療における新たな薬剤選択の考え方

病型分類

市田先生

病型分類からみた場合、患者の問題点を是正する薬剤選択が必要です。

尿酸排泄促進薬は腎臓からの尿酸排泄を促進するため、腎臓への負荷を考慮する必要があります。このため、「排泄低下型」には尿酸排泄促進薬、「腎負荷型」および「混合型」には、尿酸生成抑制薬を選択することが基本です。この点について、大山先生のお考えをお聞かせいただけますか。

大山先生

当施設でも、「排泄低下型」には尿酸排泄促進薬、「腎負荷型」には尿酸生成抑制薬を選択しています。ただし、尿酸排泄促進薬はエコーや病歴から尿路結石が否定された患者に対してのみ投与しています。尿路結石が疑われる患者に対しては、「排泄低下型」であっても尿酸生成抑制薬を使用します。

市田先生

病型の見極めが難しい場合は、尿酸生成抑制薬を選択するほうが、尿路管理の面からは望ましいと考えてよろしいですか。

大山先生

そうですね。非プリン型XOR阻害薬であれば「排泄低下型」にも安心して使用できると考えます。「混合型」では、尿酸生成抑制薬に加え、尿酸排泄促進薬を併用する場合があります。

合併症

市田先生

実臨床では、痛風・高尿酸血症のみ罹患している患者は少なく、合併症を考慮した薬剤選択が必要です。合併症では3つの観点から使い分けを考えています。①腎障害合併例では、原則として尿酸生成抑制薬を用い、可能であれば非プリン型XOR阻害薬を選択することが基本である。②肥満の患者ではインスリン抵抗性が基盤にあることが多く、排泄低下、産生過剰の両方の病態をきたしている。そのため、腎負荷の少ない尿酸生成抑制薬、またはSURIを選択することが合併症予防の観点からはよい。③合併症・臓器保護の観点からはXORを確実にブロックすることが重要なため、薬剤選択の際はXOR阻害薬それぞれの作用時間も考慮する、といった使い分けはどうでしょう。

大山先生

そうですね。おっしゃるとおりかと思います。当施設では推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m²未満の痛風患者 17例(G3a 15例、G3b 2例)を対象に、尿酸生成抑制薬として非プリン型XOR阻害薬を1年間投与したところ、6ヵ月以降は開始前と比較してeGFR値が有意に改善しました(p<0.05、対応のあるt検定)(図46)。血清尿酸値 6mg/dL以下達成者では、よりeGFR値の改善が顕著でした。つまり、腎障害合併例では非プリン型XOR阻害薬を選択するのがよいと考えます。

しかしながら、XOR阻害薬を最大用量投与しても、血清尿酸値 6mg/dL以下を達成できないケースが5%程度みられます。そのような場合は、尿酸排泄促進薬との併用も検討したいと考えていますが、今後、エビデンス構築が必要です。また、血管内皮保護の観点からは、活性酸素種を抑える非プリン型XOR阻害薬を選択するのがよいと思います。

トピロキソスタット使用時のeGFRの推移

図4:トピロキソスタット使用時のeGFRの推移

文献6)より引用

安全性

市田先生

禁忌、慎重投与では4つの観点で使い分けが考えられます。①XOR阻害薬は肝機能障害に注意する。②非プリン型XOR阻害薬・SURIは中等度腎機能障害合併例でも通常用量にて使用可能である。③慎重投与に該当するような肝障害、腎障害を含め、臓器障害を考慮して薬剤選択をすることは重要である。ただし腎障害患者のうち、尿量確保、尿pHのコントロールなど尿路管理が難しい患者では尿酸生成抑制薬を考慮する。④尿中尿酸排泄量が増加している場合は、腎臓への負担を減らす尿酸生成抑制薬を選択すべきである。以上4点につきまして、大山先生のご意見を伺えればと思います。

大山先生

高尿酸血症患者では腎結石の予防や腎機能の保護という意味で、尿路管理が重要になります。尿酸生成抑制薬を使用している場合でも尿pHが低値であったり、尿路管理が徹底できない場合は注意が必要です。また、食事や運動など日常の生活指導も大切です。

市田先生

痛風・高尿酸血症では、合併症の割合が増えている印象がありますので、病型分類を踏まえ、さらに合併症や安全性も考慮して薬剤を選択していくことが重要ですね。本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

大山先生

ありがとうございました。

References
1) 厚生労働省.2019年国民生活基礎調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html(閲覧:2022-7-28)
2) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版.東京:診断と治療社;2018.
3) 大山博司,他.痛風と尿酸・核酸.2020;44:159-66.
4) Maekawa K,et al.Drug Metab Pharmacokinet.2006;21:109-21.
5) Nakayama A,et al.Sci Rep.2014;4:5227.
6) 大山博司,他.痛風と核酸代謝.2018;42:51-8.