対談CrossTalk

Vol.4
今田 恒夫 先生 × 日高 雄二 先生

尿酸血症の現状と、
疾病認知の目指すべき方向性

高尿酸血症患者は年々増加し、成人男性の約30%に認められる。一方、高血圧などと比較して患者の疾病認知や服薬アドヒアランスが低い傾向にある。今回は高尿酸血症の血清尿酸値の治療目標値や、来院するきっかけの1つとして健康診断が果たす役割などについて、本領域のエキスパートに解説いただいた。

今田先生

本日は年々増加する痛風・高尿酸血症の現状と疾病認知の目指すべき方向について、リウマチ・痛風の専門家である日高雄二先生とお話したいと思います。

日高先生

よろしくお願いいたします。

痛風での血清尿酸値の目標値は ≦6.0mg/dL

今田先生

先生のクリニックでは、健康診断をきっかけに来院する高尿酸血症患者は多いのでしょうか。

日高先生

当クリニックでは痛風・高尿酸血症患者のうち、8割は痛風発作時に来院します。次いで多いのが健診結果を受けて来院する患者です。具体的には健診で高尿酸血症の指摘を受けた場合や、痛風の既往歴があり血清尿酸値がコントロールできていないという結果を受けた場合があります。痛風・高尿酸血症は高血圧や糖尿病と比べると、疾病そのものがあまり認知されていない印象です。

今田先生

一般の方からすると、痛風はぜいたく病のような、特殊な人だけがかかる病気というイメージの方が強いのでしょうか。

日高先生

米国の薬物治療中の痛風・高尿酸血症患者に対する認知度調査1)によると、痛風の原因については67%、症状については92%の患者が知っています。ところが、痛風の薬物治療による血清尿酸値の目標値が≦6.0mg/dLであることについては、14%の認知にとどまりました。日本でも同様の傾向があります。血清尿酸値について初診時に患者と話してみると、7.0mg/dL前後でよいと考えているケースが多いように思います。

今田先生

では、薬物治療による血清尿酸値の目標値が実際には≦6.0mg/dLであることを患者に話して、納得していただけますか。

日高先生

1回話しただけでは難しいと思います。治療を継続しながら2回目、3回目の来院時に血清尿酸値を確認し、たとえば7.0mg/dLを切って6.5mg/dLになった患者に対して「もう一息ですよ」と話しています。

今田先生

そうですね。私の場合も7.0mg/dLを切っていれば、それ以上治療しようと思わない方が多いように思います。また、国内の高尿酸血症あるいは痛風と診断された18〜65歳の約250万例の診療レセプトデータベースの横断研究2)において、尿酸降下薬による血清尿酸値≦6.0mg/dLを達成した症例の割合は、全体的にみると40〜50%になっていますが、これについてはどのようにお考えですか。

日高先生

尿酸降下薬を服薬することで満足してしまう患者が多いのだろうと思います。あるいは前述の通り、血清尿酸値が7.0mg/dL前後であれば大丈夫だろうと考えている方が多いのかもしれません。しかし、医師としては≦6.0mg/dLが治療目標であることをしっかり認知していただかなければならないと思います。

今田先生

加えて、血清尿酸値≦6.0mg/dLを達成後に安心して飲食量が増えてしまうこともあり、目標値を維持するのも非常に難しいですね。

長期にわたる治療の継続が重要

日高先生

患者から、薬物治療はいつまで続くのかと聞かれることがあります。私が「ずっとですよ」と答えると結構がっかりされてしまいます。

今田先生

そうですね。治療継続について理解を得るのは難しいですが、先生はどのように説明されていますか。

日高先生

痛風は高血圧や糖尿病と同じように、尿酸降下薬を継続して投与する必要があり、投与を中止すると血清尿酸値が上昇することを何度も繰り返し説明して、わかってもらうしかありません。

今田先生

服薬アドヒアランスについてはいかがでしょうか。

日高先生

米国で1年間の総投薬量に対する実服薬量の割合(medicine possession ratio:MPR)について疾患別で検討したところ、MPRが80〜100%の痛風患者の割合は36.8%であり、他の慢性疾患患者の割合と比べて最低値でした(図13)

疾患別服薬アドヒアランス

図1:疾患別服薬アドヒアランス

文献3)より改変・引用

今田先生

痛風の服薬アドヒアランスはそんなに低いのですね。尿酸降下薬による治療について長期的視点で取り組む必要がありますね。

では、血清尿酸値の治療目標において、医師側が注意すべき点はありますか。

日高先生

米国のTerkeltaubらのデータ4)によると、高尿酸血症の治療目標が未達成の場合、医師側の原因として、診療ガイドラインに従わない、血清尿酸値を測定しない、尿酸降下薬を処方しない、疾患の慢性経過と毎日服薬の必要性についての理解が不十分である、などの項目が挙げられます。患者側の原因としては、治療で痛みがなくなると通院しなくなるということがあります。

今田先生

本当にそうですね。痛風発作後の痛みがなくなったときに服薬を中止する患者と、継続する患者の割合についてはいかがですか。

日高先生

当クリニックの患者では3ヵ月間は継続して通院しますが、6ヵ月後には半数程度になってしまいます。

今田先生

なかなか難しいですね。そのような患者は再発して来院する傾向がありますが、患者に服薬の重要性を説明して理解してもらえますか。

日高先生

発作を繰り返す患者には、血清尿酸値コントロールの2つの重要性を説明しています。①痛風・高尿酸血症の状態が続くと高血圧などの慢性疾患の発症につながること、②痛風発作の治療と高尿酸血症の治療は異なり、発作の治療は痛みが治まれば終了するが、高尿酸血症の治療は痛みがなくなっても継続が必要であること、です。

今田先生

説明を聞いた患者の反応はいかがですか。

日高先生

皆さん驚かれますね。台湾での無症候性高尿酸血症4万例を対象とする後ろ向き症例マッチコホート研究5)と痛風4万例を対象とする前向き症例マッチコホート研究6)では、2年を超える尿酸降下治療をそれぞれ実施したところ、いずれも未治療と比較して有意に死亡リスクが低下しているというデータがあり、高尿酸血症の治療意義について患者にうまく説明できればと思います。

高尿酸血症の疫学

今田先生

国内の高尿酸血症の疫学データについて、20〜60代では20〜25%が高尿酸血症に該当し7)、また、どの年代でも男性で増加傾向にあります8)。痛風患者数も男性で顕著に増加し、1986年で約20万人、2016年では約120万人になっています9)。高尿酸血症患者数が増えている背景として、血清尿酸値を検査項目に含める自治体が増加していることも一因と考えられます。

また、われわれの高畠研究によると、男性では高尿酸血症患者236例のうち痛風の既往歴が21例、女性では38例中4例に認められたことから、高尿酸血症患者の約10分の1に痛風の既往があることがわかりました(図2)。仮に全国の痛風患者数を100万人と想定すると、高尿酸血症患者数は1,000万人と推計され、この人数に対して治療するとなると多数の専門医の協力が必要です。

高尿酸血症・痛風の男女別頻度

図2:高尿酸血症・痛風の男女別頻度

今田先生ご提供

高尿酸血症が合併症に及ぼす影響

今田先生

全国特定健診コホート研究(Japan Specific Health Checkups study:J-SHC study)10)では、高尿酸血症患者の約半数はメタボリックシンドローム(MetS)の項目と関連し、残りの約半数は非該当と判定されています。現在の特定健診の基準では、高尿酸血症患者であってもMetS非該当であれば、保健指導などの介入が行われない可能性があります。先生の患者ではMetSを合併している高尿酸血症の患者は多いですか。

日高先生

MetSを合併しているのは、2〜3割という印象です。

今田先生

痩せている方でも意外と血清尿酸値が高い場合がありますね。

日高先生

特定健診で血清尿酸値が検査項目として採用されることは、高尿酸血症の早期発見につながるので非常によいことだと思います。

今田先生

われわれ腎臓内科医は高尿酸血症も腎不全リスクであると認識しています。沖縄県総合保健協会の健診データによると、男女ともに血清尿酸値は血清クレアチニン上昇と正相関していました11)。また、J-SHC studyでは、血清尿酸値が男性≧5.7mg/dL、女性≧4.4 mg/dLで2年間の観察により腎機能の有意な低下が認められました12)。このことから、血清尿酸値が健診の基準値である7.0mg/dLを下回っていても、腎不全リスクの可能性が示唆されます。

さらに、われわれの高畠研究において血清尿酸値とアルブミン尿の関連を検討したところ、血清尿酸値が男性≧7.0mg/dL、女性≧6.0mg/dLでアルブミン尿が有意に増加しました。アルブミン尿は血管障害のマーカーと考えられるため、これらの患者では血管障害が生じる可能性が示唆されました13)

前出のJ-SHC studyにおいて、血清尿酸値と総死亡・心血管死亡のリスクの関連について検討しました。男性では血清尿酸値≧7.0mg/dLおよび<3.0mg/dLで総死亡、心血管死亡のリスクが有意に増加するJカーブを描きました(図314)。具体的なカットオフ値は異なるものの、女性でも同様のJカーブがみられました。また、血清尿酸値の1年間の大きな変化は、血清尿酸値とは独立した死亡リスクである可能性が示唆されました15)

高尿酸血症が合併症にもたらす影響

図3:高尿酸血症が合併症にもたらす影響

文献14)より作図

日高先生

今後は血清尿酸値そのものに加えて、上昇・低下を含めたリスクをみていかなければいけませんね。

今田先生

総死亡・心血管リスクへの影響について人口寄与危険割合を指標として検討したところ、高尿酸血症は高血圧、喫煙、糖尿病に続いて影響がありました16)。血清尿酸高値は、糖尿病、高血圧、脂質異常とは独立した血管障害の危険因子として認識していただければと思います。

生活習慣病の合併リスクを低減するためには、血清尿酸値はどの程度コントロールできればよいとお考えですか。

日高先生

高尿酸血症の定義は血清尿酸値>7.0mg/dLですが、臨床ではより低く、男性6.0mg/dL、女性5.0mg/dLを境に生活習慣病に注意が必要ではないかと思います。

高血清尿酸値の患者の生命予後の改善のために

今田先生

血清尿酸値の治療目標値≦6.0mg/dLを達成するには、どのように治療薬を投与したらよいでしょうか。

日高先生

排泄低下が非常に強い患者に対しては、尿酸生成抑制薬では不十分です。また、産生過剰が強い患者に尿酸排泄促進薬を投与すると、尿中尿酸値が増加し、尿路結石のリスクが高くなります。このような極端な例を除けば、血清尿酸値を≦6.0mg/dLにコントロールできればいずれの尿酸降下薬を使用してもよいと思います。あとは、病型分類に有効な尿中尿酸排泄量を測定できるとさらによいですね。

今田先生

高血圧を合併している場合は、どのように治療薬を選択したらよいでしょうか。

日高先生

高血圧の場合は降圧利尿薬を使用すると血清尿酸値が上昇するので、降圧利尿薬以外の降圧薬を使用するようにしています。

今田先生

最終的には患者の生命予後の改善が治療目標になると思いますが、高尿酸血症治療の今後の課題について、どのようにお考えですか。

日高先生

痛風・高尿酸血症の長期にわたるアウトカムや心疾患との関連性など、より多くのデータが必要かと思います。

今田先生

高尿酸血症の治療に興味をもって取り組む仲間を増やしたいですね。

日高先生

そうですね。循環器専門医に血清尿酸値のコントロールの話をすると、喜ばれると思います。

今田先生

ぜひ循環器専門医とも連携し、患者の生命予後の改善を目指したいと思います。本日はありがとうございました。

References
1) Coburn BW, et al. Arthritis Care Res. 2016; 68: 1028-35.
2) Koto R, et al. Mod Rheumatol. 2020; 31: 261-9.
3) Briesacher BA, et al. Pharmacotherapy. 2008; 28: 437-43.
4) MedScape Education by Terkeltaub RA, 2014.
5) Chen JH, et al. PLoS One. 2015; 10: e0145193.
6) Chen JH, et al. J Rheumatol. 2015; 42: 1694-701.
7) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版. 大阪:メディカルレビュー社:2010.
8) 冨田眞佐子, 他: 痛風と核酸代謝. 2006; 30: 1-5.
9) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版. 東京:診断と治療社;2018.
10) 今田 恒夫, 他.痛風と核酸代謝. 2017;41: 69.
11) Iseki K, et al. Hypertension Res. 2001; 24: 691-7.
12) Kamei K, et al. Nephrol Dial Transplant. 2014; 29: 2286-92..
13) Suzuki K, et al. : Clin Exp Nephrol. 2013; 17: 541-8.
14) Konta T, et al. Sci Rep. 2020; 10: 6066.
15) 今田 恒夫, 他.痛風と尿酸・核酸.2021;45:123-9,.
16) Otaki Y, et al. Sci Rep. 2021; 11: 8999.