対談CrossTalk

Vol.3
濵口 朋也 先生 × 堤 善多 先生

糖尿病を合併する高尿酸血症患者に
対する治療戦略

高尿酸血症患者では、インスリン抵抗性を基盤とする糖尿病をはじめさまざまな生活習慣病を併存する。そのため、治療においては痛風抑制のみならず、併存症治療と相互の影響にも配慮した複雑な治療選択が求められる。そこで今回は、糖尿病を合併する高尿酸血症患者に対する治療戦略について、本領域のエキスパートに解説いただいた。

糖尿病と高尿酸血症の関係

濵口先生

本日は、糖尿病を合併する高尿酸血症患者に対する治療戦略をテーマに、糖尿病、痛風患者を多く診療されている堤善多先生と意見交換を行いたいと思います。

堤先生

どうぞよろしくお願いいたします。

濵口先生

現在、日本をはじめ世界各地で糖尿病患者が増加するなか、血清尿酸値高値が2型糖尿病発症のリスクであることが報告されています(図1)1)。しかも、糖尿病発症のカットオフ値は、高尿酸血症の診断基準である血清尿酸値7.0mg/dLより低いことも示されています2)

2型糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌不全により成立する疾患ですが、空腹時のインスリンあるいはCペプチド、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)の上昇に伴い血清尿酸値が上昇することも示されています3)。実際、インスリン抵抗性が肥満や内臓脂肪蓄積などを基盤とし、肝臓において糖・脂質代謝障害から尿酸産生過剰に、あるいは高インスリン血症そのものが近位尿細管における尿酸トランスポーター(URAT1)による尿酸再吸収を亢進させ、尿酸値の上昇につながるなど、高尿酸血症をきたしやすいメカニズムが示唆されています。そのため、高尿酸血症は、内臓脂肪蓄積を背景とするメタボリックシンドロームの構成要素の一つとしても注目されています。

2007年に当院糖尿病外来受診者(n=497)を調べたところ、高血圧の合併率が59%、各種脂質異常がおおむね40%、慢性腎臓病(CKD)が47%であるのに対し、高尿酸血症は16%と低い結果でした。先ほど示したように、糖尿病初期におけるインスリン抵抗性の増大が肝での尿酸産生亢進や腎での尿酸排泄低下機序により血清尿酸値を上昇させるのに対して、糖尿病増悪に伴う浸透圧利尿や尿糖排泄に伴う尿酸排泄亢進は血清尿酸値を逆に低下させる方向に作用するからです3)

血清尿酸値高値は糖尿病発症のリスク

図1:血清尿酸値高値は糖尿病発症のリスク

文献1)より作図

堤先生

われわれの研究でも、痛風患者では対照者に比べ有意にメタボリックシンドロームの頻度が高く、高中性脂肪(TG)かつ/または低HDL-コレステロール、高血圧の頻度も同様の結果でした(図2)4)。空腹時血糖異常の頻度は非常に少なかったのですが4)、それは糖代謝異常がある程度進んでから増加するためだと思われます。

メタ解析によっても、血清尿酸値1.0mg/dL上昇に伴う2型糖尿病の発症リスク上昇は17%と、BMI 1kg/m2の増加によるリスク上昇16%に匹敵する影響力をもつことも示されています5)。ただし、このリスク上昇が尿酸そのものによるのか、インスリン抵抗性などを介したサロゲートマーカーと捉えるべきか、明らかにはなっていません。

痛風患者におけるメタボリックシンドロームの構成要素の頻度

図2:痛風患者におけるメタボリックシンドロームの構成要素の頻度

文献4)より引用

糖尿病・高尿酸血症と腎機能障害

濵口先生

糖尿病患者では腎機能障害にも目を向ける必要があります。1998年以降、糖尿病性腎症は透析導入原因疾患の第1位です6)。腎症の発症・進展は血糖コントロールの良否と密接に関連しており、2013年の熊本宣言でもヘモグロビンA1c 7.0%以下を目指した厳格な血糖コントロールが推奨されています。

一方、尿酸塩結晶が腎に沈着し、腎機能障害をきたす痛風腎の病態も知られています。尿への過剰な尿酸排泄は尿酸塩沈着により尿細管障害をきたすほか7)、アルブミン尿を促進して腎機能低下につながるとの報告もみられます8)。よく知られている久山町研究においても血清尿酸値高値は日本人におけるCKDのリスク因子となることも示されています(図3)9)

これらのことから、糖尿病を合併した高尿酸血症患者の腎機能維持には血糖コントロールだけでなく、血清尿酸値に注目した治療が必要と考えられます。たとえば最近、糖尿病治療に頻用されているsodium-glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は、血清尿酸値を降下させるとの報告があるほか、腎機能に対しても好影響が期待されています。

そのほか、糖尿病性腎症合併の高尿酸血症患者にトピロキソスタットを投与したUPWARD試験では、参考データではありますが、プラセボ群が尿中アルブミンの増加傾向、推算GFR(eGFR)低下を示したのに対し、トピロキソスタット群ではeGFRが維持されており、プラセボ群と比較して有意差が認められました10)。すなわち、糖尿病性腎症の進行とともに起こりうる腎機能低下を抑制する可能性が示唆されています。

血清尿酸値によるCKD、腎機能障害およびアルブミン尿の年齢・性調整累積発症率

図3:血清尿酸値によるCKD、腎機能障害およびアルブミン尿の年齢・性調整累積発症率

文献9)より引用

糖尿病を合併する高尿酸血症治療の治療戦略

濵口先生

では次に、堤先生から糖尿病を合併する高尿酸血症治療の留意点をお話しいただきたいと思います。

堤先生

まず、濵口先生がお話しになった血糖コントロールの関係ですが、私は研修医時代、血清尿酸値が正常で血糖コントロール不良の患者にインスリン治療を開始し、尿糖排泄が低下して安心していたところ、半年後に痛風発作を起こした、という経験があります。また、血清尿酸値正常の糖尿病合併心不全の患者に対し、浮腫対策のためループ利尿薬を使用して、半年も経たないうちに痛風発作が起きたこともありました。糖尿病患者は見かけ上の血清尿酸値が正常であることに安心せず、その推移にも目を向けるべきです。

濵口先生

糖尿病治療による血糖コントロールの改善がかえって血清尿酸値を上昇させた事例ですね。おっしゃる通り注意すべき点の一つです。

そのほか、併用薬で注意すべきことはございますか。

堤先生

特に循環器系の合併症治療薬が血清尿酸値を上昇させます。しかも合併症が増えるなかでポリファーマシーは避けて通れず、生命予後に関連する薬剤が優先されがちな点や、無症候性高尿酸血症に対する尿酸降下薬をどう位置付けていくかも課題です。

また、当院には痛風発作のコントロールが難しい患者が紹介されてきますが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方されているにもかかわらず痛風発作が持続、あるいは反復する場合は、ステロイドパルス療法が有用です。しかし、痛風患者は糖代謝異常の方が多く、インスリン治療中のステロイドパルス療法は躊躇することがあります。ただし一時的に血糖コントロールは悪化してもステロイドを終薬すればすぐに戻るため、腎機能障害、肝機能障害の合併例では積極的に検討すべきだと思います。

そのほか、ビグアナイド薬について私自身はさほど乳酸アシドーシスの経験はありませんが、乳酸はきわめて血清尿酸値を上昇させます。さらには、血清尿酸値を下げるとクレアチニンレベルが一時的に低下することをよく経験します。高尿酸血症は腎機能を低下させるリスクであり、糖尿病性腎症の進展抑制のためにも是正が望ましいと考えられます。

濵口先生

堤先生が指摘されたように、合併症・併存症の多い糖尿病診療ではポリファーマシーの問題は容易に解決できません。治療の優先順位に迷う場合も多くありますが、患者の予後やQOLを考えれば腎保護のための尿酸値管理は優先度が比較的高いと考えます。

堤先生はポリファーマシーを回避されるために注意なさっている点はございますか。

堤先生

メタボリックシンドロームの合併例については、SGLT2阻害薬を積極的に使用しています。さまざまな種類がありますが、クラスエフェクトとしてどれも同じような効果だと思っています。また、メトホルミン、チアゾリジン薬なども血清尿酸値を下げますから、高尿酸血症を合併した糖尿病患者に検討してよいと思います。

さらに、合併症として多い高血圧や脂質異常症の治療薬として、ロサルタンおよびフェノフィブラートにはURAT1阻害作用が認められ、尿酸排泄促進効果が期待できこれらも選択肢となりうるでしょう。

濵口先生

チアゾリジン薬は血糖コントロールに有用ですが、私の患者でも体重が10㎏も増加してしまい、使用を断念せざるを得なかった経験があります。一方でSGLT2阻害薬は尿酸値だけでなく、中性脂肪や体重にも好ましい影響が期待されることからメタボリックシンドロームなどの特徴を示す患者に好んで使用しています。

高尿酸血症の病型分類と治療選択

濵口先生

また近年、尿酸降下薬は多くの選択肢が登場していますが、先生は糖尿病を合併する高尿酸血症の治療において、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬をどう使い分けされていますか。

堤先生

日本人の高尿酸血症は尿酸排泄低下型が多くを占めていますが、どちらの病型でも尿酸プール量が増えているのは確かです。尿酸排泄促進薬を最初に使うと尿酸プールから一気に尿酸が排泄されて結石のリスクがあるため、まずはキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬を検討します。

もちろん、症例によっては最初から尿酸排泄促進薬を使うこともありますが、腎機能をよく検討したうえで選択すべきだと思っています。

濵口先生

日本人は尿酸排泄低下型が多く、尿酸排泄促進薬を使うのは王道の一つですが、インスリン抵抗性を基盤とするなかでは尿酸生成抑制薬も一つの選択肢になると考えられます。最近はあまり病型分類をせずに尿酸生成抑制薬を使用する風潮もありますが、先生はどのようにお考えでしょうか。

堤先生

当院では病型分類は必ず行っています。それは、患者への説明によりコンプライアンスを長期にわたり維持すること、そして「あなたはこういう状態ですよ」と示すことを重視しているためです。もちろん薬剤の選択にも重要な示唆を与えてくれますし、尿酸産生過剰型のなかには非常に少ないながら悪性疾患も隠れていることがあり、原疾患を掘り起こす意味でも病型分類は重要です。

濵口先生

いわゆる尿酸排泄促進薬は腎機能が低下してくると使いづらい面もありますが、先生はどうされていますか。

堤先生

eGFRで30mL/分/1.73m2を下回ると効きにくくなる印象です。15mL/分/1.73m2まで落ちると、使用は控えたいと思います。

XO阻害薬を導入してしばらくの間は腎機能が改善することをよく経験しますので、最初にXO阻害薬を用いることが多いです。

濵口先生

安全性などで注意点はありますか。

堤先生

新規のXO阻害薬あるいはドチヌラドは非常に少ない印象です。ただし、注意深くみていく必要があるでしょう。

濵口先生

やはり総合的に病型・病態を評価しながら、治療を受けられる患者も理解されたうえで適切な治療薬を選択することが重要ということですね。本日は糖尿病を合併した高尿酸血症が示すさまざまな病態を考慮した治療選択について、臨床の実態に即した有益なお話を伺うことができました。どうもありがとうございました。

堤先生

こちらこそありがとうございました。

References
1) Bhole V, et al. Am J Med. 2010;123:957-61.
2) Dehghan A, et al. Diabetes Care. 2008;31:361-2.
3) Choi HK, et al. Rheumatology (Oxford). 2008;47:713-7.
4) 堤 善多,他.痛風と核酸代謝.2008;32:25-31.
5) Kodama S, et al. Diabetes Care. 2009;32:1737-42.
6) 新田孝作,他.透析会誌.2020;53:579-632.
7) Kosugi T, et al. Am J Physiol Renal Physiol. 2009;297:F481-8.
8) Hovind P, et al. Diabetes. 2009;58:1668-71.
9) Takae K, et al. Circ J. 2016;80:1857-62.
10) Wada T, et al. Clin Exp Nephrol. 2018;22:860-70.