QA& 専門医に聞く、治療のABC
細山田 真 先生
帝京大学薬学部臨床薬学講座人体機能形態学研究室 教授

Vol.8
血清尿酸値が男性で高いのはどうしてでしょうか
  • 1日の尿酸排泄量において男女による性差は認められない
  • 男性では、尿酸の再吸収亢進、あるいは分泌低下が起きている
  • 性ホルモンが尿酸トランスポーター発現に影響を与えている

ヒポクラテスの警句集にあるように(表1)、痛風の性差については古代から知られてきた。現代の日常診療においても、血清尿酸値は男性で高く、女性で低いことは多くの臨床医が実感するところと思われる。

現に、米国ミシガン州で6,000人の男女を対象に行われた疫学研究1)では、男性全体の約7.4%、女性全体の約2.4%が高尿酸血症と考えられ、高尿酸血症は男性に多い。同研究ではさらに年代別に血清尿酸値を観察しており、男女ともに9歳までが最も低く、10歳以降に上昇し始める。その後、男性は15歳以降も上昇を続け25歳以上で横ばいとなるが、女性は15歳以降では上昇せず、横ばいで推移した後、50歳代で上昇に転じる。このような年代別血清尿酸値の変化から、血清尿酸値に性差が認められるのは性ホルモンの影響と考えられる。

ただ、ヒトでは尿酸産生過程に性差がなく1日の尿中尿酸排泄量に男女差は認められない。一方、尿酸クリアランス/クレアチニンクリアランス比で示される尿酸再吸収過程には性差があることが示されており、男性は女性に比べ腎臓における尿酸再吸収亢進が起きていると推測される。

腎尿細管における尿酸の再吸収は、主に近位尿細管管腔側に発現する尿酸トランスポーターURAT1と、基底膜側に発現する尿酸トランスポーターGLUT9により担われている。腎臓における尿酸再吸収が男性で亢進しているとすれば、URAT1、GLUT9の発現量が女性よりも多い可能性や、管腔内外の乳酸濃度勾配を形成するNaモノカルボン酸共輸送体であるSMCTの発現変動により、細胞内から管腔側へ向けての乳酸の濃度勾配が大きくなり、URAT1による尿酸-乳酸交換輸送活性が亢進する可能性などが考えられる。

そこで、マウスを用いて尿酸トランスポーターの発現量に対する性ホルモンの影響を検討した。その結果、男性ホルモンであるテストステロンによりURAT1、SMCT1の発現が増加し2)、女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンによりすべてのトランスポーターの発現が低下していた(表23)4)。したがって、思春期男性ではSMCT1を介したURAT1の輸送活性亢進により尿酸再吸収が亢進し、閉経前女性ではURAT1とSMCT1の発現量低下により尿酸再吸収が抑制されて、全体として「血清尿酸値は男性が高い」という性差が生じていると考えられる。

事実として、閉経後には女性の血清尿酸値が上昇することが確認されており、これも性ホルモンの関与を裏付けている5)

表1ヒポクラテスの警句集

表2性ホルモンによるマウス尿酸トランスポーターの発現変化

URAT1:urate transporter 1
SMCT1:sodium-coupled monocarboxylate transporter 1
SMCT2:sodium-coupled monocarboxylate transporter 2
GLUT9:glucose transporter9
ABCG2:ATP-binding cassette transporter G2

文献4)より引用

References
1) MIKKELSEN WM,et al.Am J Med.1965;39:242-51.
2) Hosoyamada M,et al.Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2010;29:574-9. 
3) Takiue Y,et al.Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2011;30:113-9. 
4) 細山田真.性差.高尿酸血症と痛風.2015;23:127-31.
5) Akizuki S.Ann Rheum Dis.1982;41:272-4.

血清尿酸の治療目標値は、男性と女性で分けて考えたほうがよいでしょうか
  • 現状では高尿酸血症の定義、薬物療法による管理基準に男女で違いはない
  • 性差を考慮した女性の治療目標値の設定には、介入研究が必要である
  • 閉経前女性で血清尿酸値7.0mg/dLを超える場合は、患者背景の精査と生活指導を行う

高尿酸血症状態が長期に続けば、やがて尿酸塩沈着症としての痛風、尿路結石、痛風結節が生じ、尿酸塩沈着症が現れなくても、その他の生活習慣病の発症さらには心血管疾患を引き起こす可能性があり、高尿酸血症への介入が重要であることは男女を問わない。

また、前述のQで述べたように血清尿酸値には明確な性差があるが、血清尿酸の飽和濃度に男女で違いはなく、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』1)では、高尿酸血症の定義に性差を設定していない。つまり男女関係なく、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものが高尿酸血症であり、薬物治療を開始すれば6.0mg/dL以下に管理することが望ましいと推奨されている。

ただし、女性においては、血清尿酸値の飽和濃度である7.0mg/dL以下であっても、血清尿酸値の上昇とともに腎機能障害の進行リスク2)や、心血管系疾患のリスク3)4)の上昇が認められている。

30〜85歳の健康な日本人集団13,070名を対象とした研究では、心代謝系疾患の発症リスクが最も低くなる血清尿酸値の範囲は、男性で5mg/dL未満、女性で2〜4mg/dLであった(図15)。このような研究結果をもって、薬物治療を開始した場合の血清尿酸値の目標値について、男女別に設定することの妥当性を論じる向きがあるかもしれないが、本研究はあくまで観察研究であり、因果関係の推論は難しい。性差に配慮した血清尿酸値の治療目標値設定にあたっては、高尿酸血症患者を対象として、尿酸降下薬を用いた介入研究による証明が前提となるべきであろう。

なお、前述のQの通り、女性の血清尿酸値は50歳代で上昇に転じ、高尿酸血症発症のリスクが高まるが、臨床では稀に閉経前であっても血清尿酸値が7.0mg/dLを超える症例に遭遇する。閉経前女性で血清尿酸値が高い場合は、高血圧や2型糖尿病または耐糖能異常、脂質異常症、肥満、アルコール過剰摂取、利尿薬使用などが疑われることから、潜在する疾患や生活習慣の精査を行う。そして、女性であっても血清尿酸値の増加や急激な変動、高値に注意を払い、尿酸降下薬の適応となるまでは十分な生活指導を行うことが勧められる。

図1ベースライン時(2004年)の各血清尿酸値における疾患の有病率

文献5)より引用

References
1) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年改訂版).東京:診断と治療社;2019.
2) Kumagai T,et al.Clin Exp Nephrol.2017;21:182-92. 
3) 久留一郎.血圧.2007;14:40-8.
4) 久留一郎,他.Modern Physician.2007;27:701-11.
5) Kuwabara M,et al.J Clin Med.2020;9:942.