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高尿酸血症をマネジメントする
尿酸 NEXT Stage 2022 No.3
食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加により、高尿酸血症の患者が増加している。大量に生成される尿酸を抑制すべく、1969年に尿酸生成抑制薬のプリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬アロプリノールが登場すると、日本人で多いとされる尿酸排泄低下型に対しても用いられることが多かった。
その後、尿酸トランスポーターとしてOAT11)、URAT12)が同定され、近位尿細管S1分節の管腔側膜のURAT1により再吸収された尿酸は基底膜のGLUT9により血中に運ばれ、OAT1はS2分節の基底膜に局在し3)、血中から取り込まれた尿酸は管腔側膜のABCG2などにより分泌される。さらに、腸管からの腎外排泄機序が明らかとなった4)。
これらの知見の蓄積により、高尿酸血症の病型分類は、従来の「尿酸産生過剰型」,「尿酸排泄低下型」,「混合型」から、「腎負荷型(尿酸産生過剰型+腎外排泄低下型)」,「尿酸排泄低下型」,「混合型」という新たな考え方が提唱されている。
病型分類は、正確には蓄尿による尿酸排泄量[尿中尿酸排泄量(EUA)]と尿中尿酸クリアランス(CUA)によるが(表1)5)、私自身は外来では腎機能が正常であれば随時尿による簡便法により、尿中尿酸濃度/尿中クレアチニン濃度(UUA/UCr)比≧0.8を腎負荷型、UUA/UCr比≦0.4(表2)6)あるいは腎機能を考慮して尿中尿酸排泄率(FEUA)<5.5%(表3)5)を尿酸排泄低下型としている。
治療薬は、尿酸生成抑制薬では非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬のフェブキソスタット、トピロキソスタットが加わり、腎機能の改善7)や微量アルブミン尿の改善8)-10)などが期待される。尿酸排泄促進薬では、従来の非選択的尿酸再吸収阻害薬に加え選択的尿酸再吸収阻害薬のドチヌラドが登場し、OAT1/3やABCG2にはほとんど作用することなくURAT1に選択的に作用し、尿細管での尿酸分泌ならびに腸管での排泄を抑制しない薬理学的特徴により、さらに血清尿酸の目標値6.0mg/dL以下の到達を目指せるようになった。各種尿酸降下薬が登場し選択肢が増えたことは、多くの患者で病型に則した治療を可能にすると期待できる。
表1EUAとCUAによる病型分類
文献5)より引用
表2簡便法による病型分類
文献6)より引用
表3CUAとクレアチニンクリアランス(CCr)による病型分類
文献5)より引用
腎臓内科では、腎機能の低下あるいは利尿薬の使用に伴い、尿酸排泄低下型の高尿酸血症を呈する患者が多い。腎機能の悪い患者は蛋白制限のもとプリン体摂取制限も目指していると思われるが、食事療法によっても高尿酸血症が持続する場合は尿酸降下薬の開始や見直しが必要となる。
たとえば、腎機能低下例においては、プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬は減量が必要となり、血球減少などの副作用も懸念されるが、非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬では尿酸値の低下とともに腎機能が改善することが報告されている。そこで、患者には「食事療法で尿酸が下がらないところをお薬で補いましょう。尿酸を下げれば腎機能も改善しますよ」と説明している。その後、尿酸値と腎機能の推移データを共有すると(写真)、納得し、治療継続に意欲をみせる患者は多い。
また、酸性尿を是正すべく、私は炭酸水素ナトリウム(重曹)1g分2を併用して尿のアルカリ化を図る。腎機能が正常でカリウムが高値でなければクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤を用いてもよい。尿中pHを6.5〜7.0に維持することで結石形成を予防するほか、腎不全の代謝性アシドーシスの治療や夏場の脱水予防、硝子円柱形成を抑制してネフロンの流れをよくすることによる糸球体濾過量(GFR)の改善効果、胃薬としての効果も期待できる。こうした治療の工夫によっても目標とする血清尿酸値6.0mg/dL以下に到達しない場合は、「尿酸が高いままだと、腎機能が低下し続け、血管病変の進行も早くなります」と説明し、病型を再評価し、腎負荷型であればあらためてプリン体制限食を強化し、非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬を増量する。一方、尿酸排泄低下型であれば、「最近新しくより選択的に尿酸の輸送体を抑える薬ができたので使ってみましょうか」と提案し、ドチヌラドに切り替え、最小量から使用する。ドチヌラド開始直後には一時、尿中の尿酸排泄量が増加するため、尿管結石の予防のため十分に尿中pHをアルカリ化しておく必要がある。
写真患者説明用の尿酸値と腎機能の推移データ
References
1) Sekine T,et al.J Biol Chem.1997;272:18526-9.
2) Enomoto A,et al.Nature.2002;417:447-52.
3) Tojo A,et al.J Am Soc Nephrol.1999;10:464-71.
4) Ichida K,et al.Nat Commun.2012;3:764.
5) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.東京:診断と治療社;2018.
6) 臨床医マニュアル編集委員会(編).臨床医マニュアル第5版.東京:医歯薬出版株式会社;2016.
7) Sircar D,et al.Am J Kidney Dis.2015;66:945‒50.
8) Sezai A,et al.J Cardiol.2015;66:298‒303.
9) Tanaka K,et al.Clin Exp Nephrol.2015;19:1044‒53.
10) Hosoya T,et al.Clin Exp Nephrol.2014;18:876‒84.