QA& 専門医に聞く、治療のABC
田口 博章 先生
川崎市立川崎病院 リウマチ膠原病・痛風センター 所長

Vol.6
痛風発作を訴えて来院した患者の痛みに対処するには、どのような薬剤選択をすればよいでしょうか
  • 最も重要なのは迅速な治療開始である
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、経口グルココルチコイドの選択に優先順位はない
  • 慢性腎臓病(CKD)や胃潰瘍の既往がある場合はNSAIDsを避ける
  • コルヒチンは安全性の観点から、特に腎機能低下例への投与に注意する
  • 糖尿病、感染症(足白癬など)があれば経口グルココルチコイドは使用しない

痛風発作の疼痛は強く、QOLを著しく損ない、放置することでより鎮痛が困難になるため、最も重要なのは迅速な治療開始である。薬物治療としてNSAIDs、コルヒチン、経口グルココルチコイドが用いられ、薬剤選択においては患者の併用薬や合併症、関節炎の発症から治療開始までの時間などを考慮する。従来、NSAIDsが第一選択と考えられてきたが、上述の3種類の薬剤に優劣があるとのエビデンスはない。NSAIDsの種類を含め、禁忌や副作用などについて知識のある使い慣れた薬剤を用いて、受診当日から治療を開始したい。

なかでもNSAIDsが用いられる場合が多いが、慢性腎臓病(CKD)や胃潰瘍、心血管イベントの既往、抗凝固薬投与中の患者などでは使用を避けなければならず、注意が必要である1)。また、特定のNSAIDsが優れているという根拠はないとされており2)3)、早期に十分量を投与することが重要である。コルヒチン同様、NSAIDsには尿酸降下薬投与開始時の痛風発作予防効果があることも示されている4)

コルヒチンの高用量投与は、下痢、吐き気、腹痛など胃腸障害の出現頻度が高い。そのために治療継続困難となることも多く、発症12時間以内に1mg、その1時間後に0.5mgを投与する低用量投与法が推奨される1)。また、腎障害(<eGFR 30mL/分)でのコルヒチン投与の安全性は確立していないこと、eGFR 60mL/分未満では連続投与は推奨できないこと5)などから、腎機能低下例への投与には注意を要する。コルヒチンは前述3剤のなかで唯一、痛風発作予防および発作予感時の投与が保険適用となっている。日本では使い慣れない医師が多いと思われるが、NSAIDs、経口グルココルチコイドがともに使いにくいような場合の選択肢として知っておきたい。

経口グルココルチコイドは、主にNSAIDsの禁忌・無効例などの場合に用いられ、プレドニゾロン換算で20〜30mg/日を投与する1)。2週間以上投与した場合には、急に投与を中止すると副腎不全が起きるため欧州リウマチ学会は3〜5日間の投与6)を、米国リウマチ学会は5〜10日間投与するか、2週間程度の期間で漸減する方法を推奨している7)。糖尿病患者や感染症(足白癬など)併発例では使用に注意が必要である。

References
1) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.東京:診断と治療社;2018.
2) van Durme CM,et al.Cochrane Database Syst Rev.2021; 12:CD010120.
3) Pillinger MH,et al.Semin Arthritis Rheum.2020;50:S24-30.
4) Shekelle PG,et al.Ann Intern Med.2017;166:37-51.
5) 日本腎臓病薬物療法学会.腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧.2021年改訂34.1版.
   https://www.jsnp.org/docs/腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧_34.1版.pdf(閲覧:2022年4月)
6) Richette P,et al.Ann Rheum Dis.2017;76:29-42.
7) Khanna D,et al.Arthritis Care Res(Hoboken).2012;64:1447-61.
※用法・用量は各社の添付文書をご確認ください

痛風に対する治療開始・継続において、患者指導で特に注意すべきことはありますか
  • 目標を共有し、合意してともに治療に臨む(十分なコミュニケーションによるラポール形成)
  • 痛風発作の機序や治療の4つのターム(①痛風発作の治療→②高尿酸血症の治療+痛風発作の予防→③高尿酸血症の治療→④血清尿酸値の目標達成と維持)について、適切なタイミングでわかりやすく説明する
  • 受診時、特に初診時に再診予約を入れる

痛風の治療は患者と医師が目標を共有してともに臨むべきであり、医師としてその姿勢を示すことも患者の支えになる。患者の気持ちに寄り添い、信頼関係の構築(ラポール形成)に努める一方で、治療継続のために痛風発作の原因や今後の治療の流れ・目標について適切なタイミングで丁寧に説明し、理解してもらうことが重要である。痛風発作を訴えて来院した患者の治療は、①痛風発作の治療、②痛風発作を予防しつつ高尿酸血症を治療(3〜6ヵ月)、③目標とする血清尿酸値達成への治療、④目標血清尿酸値の達成・維持、という4つのタームに分けることができる。

痛風発作時には炎症や疼痛の薬物治療をできるだけ早く開始する必要があることを伝えて、迅速に治療を開始するとともに、再発時にも我慢せず痛みを感じた初日に躊躇することなく受診することを伝える。また痛風の疼痛は激烈であるため、痛みが現在進行中の患者では、長期にわたる治療についての説明を受け入れるのが難しい場合もある。将来的な血清尿酸値の目標などについては簡単に触れるにとどめ、「1〜2週間は発作を治めることに集中しましょう」といった言葉をかけるのもよいだろう。ただ、患者が疼痛の軽快に安心して治療を中断することがないように、必ず次回の診察予約を入れるようにしたい。

尿酸降下薬の投与前には治療中も痛風発作は起こりうること、尿酸値が低下することによる痛風発作誘発の可能性、また、痛風関節炎を繰り返さないために長期的には血清尿酸値を≦6.0mg/dL(重症例では≦5.0mg/dL)に維持することが目標である1)ことを説明する必要がある。これらの点を十分に説明しておかないと、治療や医師への不信感を招き、服薬の中断につながる恐れがある。

痛風・高尿酸血症は生活習慣病であり、食事療法、飲酒制限、運動の推奨を基本とする生活指導も重要である。食事指導としては、プリン体の1日摂取量が400mg程度1)になるよう勧める。こうした生活習慣の改善は容易ではなく、また個々の患者によって行動変容が困難な理由も異なる。十分なコミュニケーションをとることで、その把握に努めたい。高尿酸血症を放置することで将来起こりうるさまざまな合併症についても、その怖さを強調するのではなく、「それが防げる、必ずいいことにつながるので、一緒に頑張りませんか」といったように伝えるなど、個々の患者に合わせた治療提案を行う。

References
1) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.東京:診断と治療社;2018.