QA& 専門医に聞く、治療のABC
山内 高弘 先生
福井大学医学部
病態制御医学講座内科学(1) 教授/
福井大学医学部附属病院血液・腫瘍内科 科長

Vol.4
無症候性高尿酸血症の治療では、
どのぐらいの頻度で血清尿酸値を
測定すればよいでしょうか
  • 生活指導のみの場合、3~6ヵ月に1回程度測定する
  • 薬物治療や合併症の有無により、血清尿酸値の測定頻度は異なる
  • 薬物治療開始後、安全性と有効性の確認のため2週間後、以降1ヵ月ごとに血液検査を実施する。半年後以降は合併症がなければ2~4ヵ月に1回、合併症があればその血液検査を実施するタイミングで血清尿酸値を測定する

複数回の測定で血清尿酸値が7.0mg/dLを超えていると高尿酸血症と診断され、かつ関節や腎臓などに尿酸一ナトリウム(monosodium urate monohydrate:MSU)結晶が沈着、炎症を介して生じる痛風発作や痛風結節、痛風腎などの臨床症状が認められない状態を無症候性高尿酸血症という。

『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』1)中の無症候性高尿酸血症の治療アルゴリズムでは、血清尿酸値8.0mg/dL以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなど)がある場合や血清尿酸値9.0mg/dL以上の場合は、生活指導とともに薬物治療を考慮することが記載されている。

無症候性高尿酸血症における血清尿酸値の測定頻度に関して、明確なエビデンスはない。生活指導のみの場合はまず3ヵ月後、その効果を確認するために血清尿酸値を測定する。その時点で血清尿酸値が7.0mg/dL未満まで下がっていれば生活指導を継続し、以後は3~6ヵ月に1回程度の頻度で血清尿酸値を測定する。

生活指導に加えて薬物治療を開始したときは、尿酸降下薬の効果と安全性を確認するために血液検査を行う必要がある。尿酸降下薬のなかには、中毒性表皮壊死症や薬剤性過敏症症候群、劇症肝炎など重篤な合併症が報告されている薬剤や、腎機能低下時に用量調節が必要な薬剤などがある。そのため、薬物治療を開始したら2週間後には、主に腎機能や肝機能などを確認することを目的に血液検査を実施する。一方、尿酸降下薬による血清尿酸値低下の効果について、過去の報告2)3)によると尿酸降下薬の尿酸降下作用は投与開始から約4週で定常状態になることが示唆される。そこで、尿酸降下薬は初期用量から開始後、1ヵ月ごとに血清尿酸値を測定し、1ヵ月あたり0.5~1.0mg/dLずつ低下させるペースで漸増し、6.0mg/dL以下をめざす。

すなわち薬物治療を開始した場合、2週間後に安全性を、1ヵ月後~半年間は1ヵ月に1回安全性と有効性を確認するために血液検査を実施する。半年後以降は、合併症がなければ2~4ヵ月に1回、合併症があればその経過観察のタイミングで血液検査を実施し、血清尿酸値のほか腎機能や肝機能なども確認する。

References
1) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会(編).高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.東京:診断と治療社;2018.
2) Hosoya T, et al. J Clin Pharm Ther. 2016;41:290-7.
3) Hosoya T, et al. Clin Exp Nephrol. 2020;24(Suppl.1):80-91.

高尿酸血症と腫瘍崩壊症候群の関係を
教えてください
  • がん細胞が急速に崩壊し、高尿酸血症や高リン血症、高カリウム血症のほか、急性腎不全や多臓器不全などをきたす病態を腫瘍崩壊症候群という
  • 過剰な尿酸が塩を形成し腎尿細管や集合管を閉塞させ腎不全を招くことにより、本来のがん治療が困難となる
  • 腫瘍崩壊症候群において、高尿酸血症の治療は重要である

がん細胞は増殖すると同時に数%は崩壊しており、がん細胞が崩壊すると、細胞内から核酸やリン、カリウムなどの物質が血中に放出される。核酸はプリン体の主成分で、プリン体は体内で代謝され尿酸となる。腫瘍量が多ければ崩壊するがん細胞数は多くなり、抗がん剤治療によりがん細胞の崩壊がさらに増える。こうしてがん細胞が急速に崩壊すると、腎の生理的排泄能力を超えた大量の細胞内物質が血中に放出され、高尿酸血症、高リン血症、高カリウム血症のほか、リンと平衡関係にあるカルシウムが低下し低カルシウム血症などをきたし1)、急性腎不全や痙攣、不整脈、多臓器不全などを招く。このような病態を腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)という。

TLSが発症しやすい悪性腫瘍の種類は、腫瘍量が多く、化学療法感受性の高い造血器がんである1)。造血器がんは腫瘍量が1kgを超えることがあり、診断時点ですでにTLS、特に高尿酸血症を生じていることもある。実際、当科の検討によると、発症早期の高尿酸血症の頻度は急性リンパ性白血病で53%、慢性骨髄性白血病で44%、骨髄増殖症候群で38%などであった2)。また、最近は固形がんに対しても有効な抗がん剤が臨床使用されるようになり、固形がんでもTLSが起こりやすくなっていると指摘されている。

患者の最終的な予後は抗がん剤治療の効果により、TLS自体は迅速かつ適切な治療により大部分が回復可能である。しかし、TLSは一度発症すればその治療に難渋し、抗がん剤治療そのものの遂行が困難となる。そのため、悪性腫瘍の種類、病勢、治療介入、腎機能などからあらかじめTLSのリスクを予測し、そのリスクに応じたマネジメントを行う3)4)

その際、最も早く対処すべき病態は、高尿酸血症である。なぜなら、血中溶解度を超えて大量に産生されたMSU結晶が、腎尿細管や集合管を物理的に閉塞するとともに、血中の尿酸が腎血管内皮細胞を障害し、急性腎障害を引き起こすからである5)。尿酸による腎障害を介した尿中排泄能の低下が、TLSの増悪と抗がん剤治療の継続困難をもたらさないためにも、高尿酸血症の治療は重要である6)

References
1) Firwana BM, et al. Postgrad Med. 2012;124:92-101.
2) 稲井邦博,他.痛風と核酸代謝.1999;23:182-6.
3) Cairo MS, et al. Br J Haematol. 2010;149:578-86.
4) 日本臨床腫瘍学会(編).腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス(第2版).東京:金原出版;2021.
5) Shimada M, et al. Nephrol Dial Transplant. 2009;24:2960-4.
6) Takai M, et al. Anticancer Res. 2014;34:7287-96.