施設紹介

#21医療法人社団 博愛医院

https://www.hakuai-iin.net/
神奈川県相模原市南区南台3-12-15

院長陳 勁一先生

「博愛」に込められた想い

1969年に前院長である父が胃腸科外科の救急医院として開設して以来、当院は地域の皆様の健康への貢献を第一に考える医院として診療を続けてきました。1975年には一般診療を開始し、2006年には私が循環器・呼吸器関連の病院勤務を経て院長を引き継ぎ、老朽化した建物を一新して現在に至っています。開設以来、当院の理念は「すべての人を平等に愛すること」であり、これが「博愛医院」という施設名にも込められています。一人ひとりの患者さんを丁寧に診療することをモットーに、心のこもった医療サービスの提供を心がけています。

当院には開設当初から通院する患者さんも大勢いますが、最近はその第2世代、第3世代の患者さんも多くなってきました。地域の皆様が健康に関することを何でも相談できる身近なかかりつけ医として、小さなお子さんから高齢の患者さんまで、幅広いニーズに対応できるような医院を目指し日夜努力しているところです。

多職種連携による生活習慣病への取り組み

当院では、特に生活習慣病の診療に力を入れてきました。治療の基本は、食事療法、運動療法、薬物療法であり、看護師や薬剤師との多職種連携により生活習慣の改善を図っています。たとえば、糖尿病の患者さんに対しては、食事や運動に加えて血糖値の測定方法なども指導し、インスリン療法も導入できるような体制も整えています。

また、私の弟で副院長の陳 勁松先生は消化器がんの専門医であり(がん研有明病院)、当院では非常勤で胃・十二指腸潰瘍、ピロリ菌治療、ポリープ、胃がんなどの診断や治療に関する相談などにも応じています。さらに、必要なときには高度医療施設を紹介するような病診連携にも力を入れており、特に国立病院機構相模原病院とは密に連携し、必要に応じて大和成和病院や北里大学病院などにも紹介しています。加えて、専門分野以外の診察が必要と判断した場合は、近隣の病院との病診連携や、かかりつけ医との診診連携なども積極的に取り入れるような連携体制をとっています。

高尿酸血症治療の重要性

当院は高尿酸血症に対して、積極的な治療介入をしています。2020年に国が循環器病の予防を目的に策定した「循環器病対策推進基本計画」にも高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)に高尿酸血症が併記されました。高齢者人口の増加や健康診断受診率の向上などに伴い、高尿酸血症の患者さんも増えています。当院には約300~400名の高尿酸血症患者さんが通院し、そのなかで約100名の患者さんに対して尿酸降下薬による薬物療法を実施しています。高尿酸血症の治療は『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』に基づき、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える場合は高尿酸血症と診断し、まずは生活指導を開始します。特に食事療法が大切で、肥満の解消および予防を目的とした適正エネルギー摂取、尿酸の原料となるプリン体の過剰摂取制限、飲酒習慣がある場合は適正飲酒、尿酸の排泄を助けるために十分な飲水を行うなどの指導に力を入れています。また、尿酸に影響を及ぼす飲食物が具体的に記載された資材なども有効に活用しながら、患者さんが無理なくバランスのよい食事療法が行えるような支援も行っています。

そして、血清尿酸値が9.0mg/dLを超える、または8.0mg/dLを超えてCKDを合併しているような場合は、尿酸降下薬による薬物療法を開始するようにしています。薬物療法を開始した際には、尿酸降下薬の有効性と安全性を確認するために、定期的に血液検査を実施します。また、脱水により尿酸値が変動し痛風発作のリスクも高まるため、特に夏場は十分な水分補給をすることなどを指導しています。

痛風発作が起こった場合は適切な診断と早期からの治療介入に心がけ、コルヒチンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による治療を開始します。

高尿酸血症を単独で診療するようなケースは少なく、他の生活習慣病や循環器病が併存している場合がほとんどであり、併存疾患の治療を念頭に置きながら高尿酸血症の治療を行っていくことが重要です。たとえば、利尿薬はうっ血性心不全や腎疾患などに伴う浮腫などに対して用いられますが、利尿薬は尿酸代謝に影響を及ぼし血清尿酸値を上昇させるため、高尿酸血症の患者さんに使用する場合は十分な注意が必要です。

かかりつけ医の立場から「心不全パンデミック」に挑む

近年、超高齢社会に突入し生活習慣の欧米化が進むわが国では高齢者を中心とした心不全の患者さんが急増し、心不全パンデミックと呼ばれる事態が進行しています。増加し続ける心不全患者さんの診療を専門医のみで行うことには限界があり、かかりつけ医の役割が大きくなってきました。また、医師だけではなく、看護師や薬剤師などの多職種の協力も必須です。

病院で急性心不全の治療を終えると退院して慢性心不全の状態となり、主にかかりつけ医による診療が継続されます。しかし、多くの患者さんは呼吸状態が悪化するなどの急性増悪から再入院となり、入退院を繰り返すうちに徐々に坂道を下るかのように日常生活動作(ADL)が低下し、最終的には死に至ることになります。この急性増悪を防ぎ、坂道を下る速度を少しでも遅くするためには、適切な運動や食事などの日常生活の管理が重要で、この支援を積極的に行うことがわれわれかかりつけ医の役割と考えています。また、心不全の病態進行を抑制するだけでなく、発症を未然に防ぐという観点からも生活習慣病への治療介入は重要です。

当院では、慢性心不全を専門とする看護士(心不全療養指導士)も常勤し、多職種がチームを組み、患者さんの気持ちに寄り添いながら心不全や生活習慣病の診療に力を入れています。また、地域の住民の皆様に心不全への理解を深めていただくような啓発活動にも注力しています。一方で、最近は心不全患者さんの急性増悪による再入院を防止するための総合的活動プログラムとして心臓リハビリテーションが注目されています。近い将来、当院でもこれを取り入れられないかと模索しているところです。

医師の働き方改革の新制度が施行されるなど、医療を取り巻く環境は大きく変化しています。このようななかにあっても、常に患者さんから学ぶ姿勢を忘れずに、地域の住民の皆様から信頼されるような医院を目指し、日々精進していきたいと考えています。