施設紹介

#01医療法人如水会 嶋田病院

https://www.shimada-hp.jp/
熊本県熊本市中央区練兵町24

理事長 嶋田 英敬先生

透析医療および痛風医療を柱に、
40年以上にわたり地域へ貢献

当院は1972年に熊本県八代市に開院、1976年に現在の熊本市中心部に移転し、開院以来、腎臓内科、人工透析内科、代謝内科、内科をメインに良質な医療を提供してきました。また、開院後に県人口の増加が進み、特に県南部から熊本市内への通院は大変であるという声が聞かれたことから、上益城郡嘉島町に透析医療を中心に提供する嘉島クリニックを開設しました。当院の透析患者さんにおける10年間の平均死亡率は全国平均の1/3から1/2程度であり、64種類の透析液を患者さんに合わせて提供する処方透析を推進してきたことが、生命予後の改善につながっていると自負しています。こうした透析患者さんの長期予後改善に伴い、リハビリテーション部門の充実や送迎車の完備など生活支援に関わる取組みにも力を入れているところです。

一方、当院は 1980年の父の代に公益財団法人痛風・ 尿酸財団より推薦を受け、熊本県下唯一の痛風協力医療機関として痛風診療の実績を積んできました。私は、2001年から当院で透析医療および痛風医療に携わっています。痛風医療においては私のほか、非常勤医師1名が日本痛風・尿酸核酸学会認定痛風医の資格を有し、県内に2名しかいない痛風専門医が揃っている状況です。嘉島クリニックにおいても週2回、痛風および生活習慣病を含む内科外来診療を実施しています。

さらに当院では、災害対策ライフライン設備としての災害に強い病院をつくることを目的に井戸水濾過プラントを設置しており、断水時には地域の方々にも飲料水として提供できる体制が整っています。病院のイメージキャラクターである「しまっぴー」(図1)とともに、多くの方に親しみをもって頼られる病院でありたいと考えています。

約1,500名の痛風患者が外来受診中。
20歳代の患者が増加傾向にある。

現在、痛風治療のために通院中の患者数は約1,500名(平均年齢48歳)で、男性の割合が9割5分と圧倒的に多いです。なかには、当院の痛風協力医療機関としての歴史とともに40年以上通院されている方もいて、高齢になって熊本市内まで通うのが難しい場合には嘉島クリニックで診療を行ったり、ご近所の医療機関を紹介したりしています。当院の痛風・高尿酸血症の新規患者数は毎年100〜200名程度で推移しており、近年ではメタボリックシンドロームが疑われる20代の方の受診が増えているという印象です。痛風で受診される患者さんは、当院のホームページ、あるいは職場の同僚や近所の方からの口コミ情報を参考にして来院される方が多く、県内のほか、鹿児島県、長崎県など九州各地から来られます。また、最近増えているのがタイ、ブラジル、上海など海外に赴任している日本人の方が来院されるケースで、定期的な通院が難しい場合にはメールによる診療を行うこともあります。そのなかで当院を初めて受診される痛風・高尿酸血症患者さんの9割は痛風関節炎を発症しており、健康診断などで尿酸値が高いことを指摘されていたが、痛風発作が起こったため諦めて受診したというケースが多いです。痛風結節の出現にまで至って来院される方は、年に1人いるかどうかです。初診時の血清尿酸値は平均8.5mg/dLで、約6割の方が生活習慣病などを合併しており、最も合併頻度の高い高血圧は単独合併例が15〜16%、重複合併例まで含めると約3割に上ります。

痛風・高尿酸血症診療において、
初診時から多職種連携による
サポート態勢を構築

当院では、痛風・高尿酸血症の初診外来問診票をiPadで用意しており、この問診票に従って記入していただく時点から外来看護師が積極的に関わることで、患者さんへの理解を深め、適切なケアにつなげています。初診時には関節エコーを必ず行い、検査入院へと進みます。関節エコーでは痛風関節炎に特徴的とされるdouble contour signを重要視し、診断の補助として滑膜肥厚やaggregate に注目しています。関節エコーはその所見を患者さんにみせることで関節に尿酸塩が蓄積している状態を納得していただけるので、積極的な治療につながるというメリットもあります。無症候性高尿酸血症の患者さんでも関節エコーで異常所見が認められた場合には、検査入院を勧めています。関節エコーによる痛風関節炎の診断が難しいケースを年に1〜2例経験しますが、その際には熊本中央病院の放射線科にスペクトラルCTによる検査を依頼しています。

検査入院ではクリニカルパスを活用し、1泊2日かけて蓄尿検査、血液検査、脈波図検査、腹部超音波検査、 心電図検査、胸・腹部レントゲンなどの検査から、管理栄養士、薬剤師、理学療法士らによる患者指導までを行っています(図2)。検査入院において多職種が関わることで、患者さんに治療を継続していただくためのサポート態勢の構築を図っています。蓄尿検査ではすべての患者さんに対して24時間法を実施しており、入院が難しい場合には蓄尿容器をお渡しして、自宅で24 時間の蓄尿を行っていただきます。薬物治療により尿酸値が6.0mg/dL以下に安定した後でも高血圧をはじめとする合併症がしばしば出現することから、塩分摂取量検査などを適宜実施しています。

図2 検査入院の主な流れ(平日入院の場合)

多職種それぞれの立場で
患者さんに寄り添い、
痛風・高尿酸血症治療の継続をサポート

当院では痛風・高尿酸血症治療の継続に向けて、患者さんとのコミュニケーションの時間をとる工夫を図り疾病指導を進めてきました。たとえば、採血時の止血の待ち時間を利用して、看護師が病気の豆知識をまとめたボードを使って説明し、そのなかで医師には言いにくいことを患者さんから聞き出すなどしています。 管理栄養士および理学療法士による患者指導は、尿酸値6.0mg/dL以下を維持できるまで3回の実施を基本としています。しかし、以前の生活様式に戻る患者さんも少なくないことから、栄養・運動指導の回数をさらに増やして継続的に行っていく必要があると考えています。大事なことは多職種のスタッフが関わって患者さんを励ましたり、褒めたりすることで、治療に対するモチベーションを維持することではないでしょうか。私自身、毎回の診察において患者さんの状況を確認し、飲酒量が以前と比べて少しでも減っていたり、 尿酸値が下がって減薬に至ったりした場合にはポジティブな言葉を掛けるよう心がけています。また、医師の立場としては、患者さんが薬物治療を継続して治療目標を達成できるよう、服用回数が少ない尿酸降下薬を選択する、あるいは尿酸降下作用のある降圧薬や血糖降下薬を組み合わせるなどといった戦略を講じることが大切であると考えます。食事指導においては糖質量に注目しており、糖質制限を含めた生活習慣の改善に向けた指導に力を入れています。

専門医療機関として
高品質の医療を提供し、
人材育成と技術開発の2本柱で
社会貢献を目指す

当院は透析および痛風の専門医療機関として長い歴史と高品質を誇りとしており、病院機能評価3rdGとISO 9001認証の取得・更新に至っています。医療の質はサービスそのものであると同時にアウトカムであると思います。したがって、透析患者さんにおいてはより健康で長生きしていただく医療を、痛風患者さんにおいては痛風発作を起こさず、合併症を悪化させないための医療を提供していくことが大事であると考えています。

また、当院が掲げる病院理念は「技術と人材で社会に貢献する」です。人材育成と技術開発の2本柱で社会に貢献していく病院を目指していますので、痛風診療においても医師だけではなくスタッフも育成し、多くの患者さんにわれわれが培った専門的な知識や経験を反映していけるよう今後も努めてまいります。