しいNEXT Generation

若手研究者紹介

佐賀大学医学部循環器内科 特任教授

田中 敦史 先生

2005年
佐賀医科大学(現・佐賀大学)卒業
2007年
佐賀大学医学部循環器内科
2010年
慶應義塾大学大学院医学研究系博士課程
2012年
日本学術振興会特別研究員DC2
2015年
慶應義塾大学大学院医学研究系博士課程修了
2015年
佐賀大学医学部循環器内科 博士研究員
2018年
同 特任講師
2019年
同 特任准教授
2021年
同 特任教授(現在に至る)
所属学会:
日本痛風・尿酸核酸学会 若手委員会メンバー、日本循環器学会 Fellow、日本心臓病学会 Fellow、日本心不全学会 代議員、日本動脈硬化学会 評議員、日本高血圧学会 Fellow 評議員、日本血管不全学会 理事、日本性差医学・医療学会 評議員、日本循環器病予防学会 評議員、日本臨床薬理学会 評議員、日本抗加齢医学会 評議員

テレビドラマをみて医師を目指す

私は岡山県南西部の新倉敷駅近く、矢掛町やかげちょうという町で育ちました。小・中学校はとりたてて勉強熱心なほうではありませんでしたが、高校2年生のときに「医師になろう」と思い立ってからは、目標に向かって頑張るようになりました。

きっかけは、ジョージ・クルーニーも出演し当時ブームになっていたアメリカのテレビドラマ『ER緊急救命室』をみて、医師という存在に興味を抱いたことです。しかし、目標と現実の学力との間の大きなギャップから医学部受験をあきらめかけたこともありましたが、父が個人塾の教師をしていたことで、何でも相談できたのは助かりました。いろいろな意見やアドバイスをもらいながら佐賀医科大学への入学に至ることができました。

医局の雰囲気に惹かれて

医学部時代は、米山公啓よねやまきみひろ先生(医師、作家)のファンでよく著書を読んでいました。米山先生の初期の作品は、自身の医学部生時代のエピソードを綴ったものが多く、そのなかに「早くから国試の勉強に着手し、6年生までには合格できそうな状態になったので、それ以降は悠然と過ごした」といったような内容が書かれてあったのです。それを真似て、私も3年生くらいからまだよくわからないなりにコツコツ国試の準備を始めていたのが今となってはいい思い出です。

そんなとき、佐賀大学循環器内科教授として野出孝一先生が着任されたのです。野出先生は佐賀医科大学のご卒業で当時41歳と若く、精力的に多くの研究を手がけられ、医局は一気に活気に満ち溢れた雰囲気となっていきました。その様子をみて、卒後は循環器内科に入局しようと決めました。そして周囲が国試の勉強に励んでいるなか、私は興味をもった循環器領域に関する英語論文を図書館で読み漁っていたという、少し変わった医学部時代を過ごしたように思います。

尿酸の臨床研究との関わり

医学部卒業後は、研修医として経験を積んだあと、野出先生のアドバイスもあって2010年4月から慶應義塾大学大学院に国内留学をしました。そこでは5年間、iPS細胞を用いた疾患モデリングの研究に取り組み、学位を取得しました。

その後佐賀大学(2003年に佐賀医科大学より改名)へ戻ると、野出先生は尿酸降下薬を使った多施設共同無作為化比較試験に着手されており、私も手伝わせてもらうこととなりました。その研究は2020年に主解析の結果を報告し、現在もサブ解析が進行中です。また、2021年からは別の新規尿酸降下薬を使った研究に携わり、そちらも2023年に解析結果を報告することができ、現在はさらに新たな研究を検討中です。

一連の尿酸に関する研究でわれわれが証明したいのは、薬剤を使って尿酸値を下げれば循環器病のリスクを低減できるかどうかということです。これまでなかなか明確な結果が得られませんでしたが、2021年からの研究で、尿酸値の低下と併せて循環器病へのメリットが期待されるデータが得られました。今後研究規模の拡大や多角的な研究結果が集積していくことにより、さらなる知見が得られるのではないかと期待しています。

臨床研究の結果を現場に還元したい

現在も野出先生のもと、われわれは複数の臨床研究に取り組んでいます。私自身はそれらの研究をしっかり管理し、無事終了まで導くのが役割と自認しています。

また、臨床研究を手がけていて感じるのが、研究をうまく進めるには、医師やスタッフ、患者さんも含め、多くの人の協働がいかに必要かということです。特に最近主流の多施設共同研究では、研究に関わるすべての人がチームとなり、ともにゴールを目指す体制づくりが重要と痛感しています。

私は長年、広島カープの大ファンで、2016年の25年ぶりのリーグ優勝のときには大いに感動しました。監督の采配や選手個々のプレーにも注目しますが、それぞれの個性が寄り集まって大きな力を発揮し、チーム全体で結果を出すところに魅力を感じています。それは臨床研究の仕事に通じるところがあると思っています。

これからもチーム一丸となって研究を実践し、得られた知見を広く共有して、その成果を患者さんの診療に少しでも役立てることが理想ですね。