QA& 専門医に聞く、治療のABC 専門医による疾患解説

Vol.1
血清尿酸値の測定の
タイミングや間隔について
教えてください
  • 痛風発作の場合は治療後に改めて測定することが必要
  • 健診時に異常値であっても測定しなおすことが重要
  • 薬物療法を行っている場合は、投与開始後は2〜3週間に1回、維持量になれば2〜4ヵ月に1回が目安
  • 薬物療法の対象とならない場合は、1年に1回の検診時でも可

一般内科で血清尿酸値を測定する場面として、患者が痛風発作と思われる関節炎を起こして受診したケースが挙げられる。その際に注意したいのが、痛風発作中の血清尿酸値は必ずしも高くないということである。なかには正常値になる人もおり、血清尿酸値が低くても痛風は否定できない。その患者の日頃の尿酸値を知るためには、まずは痛風の治療を行い、発作が収まってから改めて測定する必要がある。

また、健診で血清尿酸値の異常がみつかったために受診したケースも測定のタイミングとなる。血清尿酸値は食事内容や運動などによって変動し1)、0.5〜2.0mg/dL程度上昇する場合があるといわれている2)。そのため健診で異常値を指摘された患者であっても、そのまま治療に進むのではなく、改めて血清尿酸値を測定することが重要である。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」において、薬物療法を検討する対象は、痛風発作を起こした場合、血清尿酸値8.0mg/dL以上で合併症がある場合、血清尿酸値9.0mg/dL以上の場合とされている2)。薬物療法の対象とならない患者には生活指導を行い、その後の血清尿酸値の測定は年1回、つまり「健診で再度、 異常値が出れば受診してください」ということでも構わない。

痛風発作を起こした患者では、血清尿酸値のコントロール目標は6.0mg/dL以下となる2)。尿酸降下薬の投与は発作が収まってから開始し、血清尿酸値を急に下降させると痛風発作を誘発する可能性があることから、少量から徐々に増量していく必要がある。私の場合は、薬剤投与後、 最も尿酸値が下がると思われる大体2〜3週間後に来院してもらい、血清尿酸値および副作用確認の目的で肝機能などの検査を行う。そして、検査結果が出る次の診察日までは初期用量のまま薬剤を継続処方し、また2〜3週間後に来院してもらい、血清尿酸値が6.0mg/dLを切る用量に調整していく。維持量が決まれば、通院間隔は1〜2ヵ月に1回、血清尿酸値測定の間隔は2〜4ヵ月に1回程度としている。

References
1) Statland BE, et al. Clin Chem. 1973; 19: 1380-3.
2) 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会(編) .高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.東京:診 断と治療社;2018.

痛風発作が起こりやすい季節は
ありますか
  • 痛風発作で受診した患者は夏季に多く6月がピーク
  • 英国においても、痛風の発症と痛風発作が多いのは夏季
  • 夏季に多い要因として考えられるのは、アルコールや清涼飲料水の摂取量の増加、脱水

痛風発作は夏季に多いと報告されている。月に1,500例以上の痛風・高尿酸血症患者を診療する両国東口クリニックの調査で、痛風外来を痛風発作で受診した初診患者数を2004〜2008年の5年間にわたり月別に集計した結果、6月をピークとして5月から10月にかけて多く、一方で冬季は比較的少なく12月が最小であったと報告されている()1)

海外では、イングランドとウェールズの家庭医療ネットワークのサーベイランスデータを用いた後ろ向きコホート研究(1994〜2007年)において、痛風の新規発症と急性発作を併せた罹患率は毎年4月下旬〜9月中旬の夏季にピークがあることが報告されている2)

図1痛風発作初診患者数の月別変化

文献1)より引用

こうした季節性の変動の背景に、アルコールや清涼飲料水の摂取量の増加が考えられる。夏季はアルコール、なかでも特にビールの摂取量が増加する3)。アルコールはそれ自体が血清尿酸値を上昇させるうえ、ビールに含まれるプリン体量は、銘柄によって異なるものの1缶350mLあたり11.6〜34.2mg 4)とワインや蒸留酒よりも多い。ビールの摂取量が増えるほど血清尿酸値が上昇するとの報告もある5)

また、多くの清涼飲料水に含まれるフルクトースも血清尿酸値を上昇させることがわかっている。果物中のフルクトースは腸管での吸収が早くない6)ことからそれほど血清尿酸値に影響を与えないが、清涼飲料水に含まれるフルクトースは腸管での吸収が早く血清尿酸値を上昇させる。 清涼飲料水を1日2杯以上飲むグループと1ヵ月に1杯未満のグループとを比べると、痛風の相対危険度は1.85倍に増加したとの報告がある7)

また、脱水になると糸球体濾過量が減少し、尿細管における尿酸の再吸収が増加して尿酸排泄が低下する結果、血清尿酸値を上昇させる。5月は気温が高い日が増えてくる一方で十分な水分摂取を怠る傾向があり、脱水を助長する可能性がある。高度な脱水でなければ影響は少ないと考えられるが、5月頃から十分な水分摂取を心がけることも大切である。

References
1) 大山博司 . 痛風発作の起こりやすい季節はありますか? . 高尿酸血症と痛風 . 2012;20:17-8.
2) Elliot AJ, et al. Ann Rheum Dis. 2009; 68: 1728-33.
3) 総務省統計局. 「ビール」及び「発泡酒・ビール風アルコール飲料」の購入数量 . 家計調査通信第558号.
 https://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/2020_08.pdf
4) 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会(編) . 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 . 東京:診断と治療社;2018.
5) Choi HK, et al. Arthritis Rheum. 2004; 51: 1023-9.
6) 山本徹也 . ショ糖、果物摂取と高尿酸血症.高尿酸血症と痛風 . 2008;16:42-5.
7) Choi HK, et al. BMJ. 2008; 336: 309-12.