高尿酸血症とは

診断と治療

(監修)
医療法人社団つばさ両国東口クリニック
理事長 大山博司 先生

診断

高尿酸血症の測定と病型分類1,2)

血中の尿酸値は、高尿酸血症の診断を行う上で必須項目であり、治療の指標としても重要です。日常検査に用いる測定方法としては、酵素反応を利用して特異性を向上させた酵素法が用いられています。この反応は、尿酸に特異的で、薬物などの影響は少ないとされています。なかでもウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法がほとんどの自動分析装置で採用されており、正確な測定値が得られるため一般的です。ただし、尿酸値は、測定誤差、生理的変動(日内変動、季節変動など)があることを考慮して、判断する必要があります。

高尿酸血症の病型は、腎臓から尿中への尿酸排泄能と尿中尿酸排泄量により、尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、腎外排泄低下型と混合型の4つに分類されます[図1]

図1
高尿酸血症の病型分類

:原因部位

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 96, 2018

腎臓からの尿酸排泄能の指標としては尿酸クリアランスと尿酸分画比(尿酸クリアランス/クレアチニンクリアランス比)が用いられ、低値を示すと尿酸排泄低下型とされます。一方、尿酸産生過剰型は、日常臨床で尿酸の産生量を測定することが困難であるため、尿中への尿酸排泄量を指標として、尿中尿酸排泄量の増加をもって尿酸産生過剰型とみなしてきました。新たに加わった腎外排泄低下型も、尿酸の腎外(腸管)排泄が低下した結果、見かけ上は、尿酸産生過剰型の所見を呈しますが、尿酸トランスポーター(ABCG2)の機能低下が判定の根拠となるため、臨床検査上では区別がつきません。しかしながら、尿中尿酸排泄量の増加を認める高尿酸血症をすべて尿酸産生過剰型と呼ぶことは誤解を招きやすいため、尿酸の腸管排泄減少による高尿酸血症が腎外排泄低下型として区別されました。

高尿酸血症の診断時、尿酸の産生と排泄のバランスは、定常状態にあるので、治療開始前に数回、尿酸排泄量と尿酸クリアランス(CUA)を測定することにより病型分類が可能です。測定の際、腎機能について補正するためクレアチニンクリアランスも合わせて測定します。測定には24時間法と60分法があります[表1]

表1
CUAおよびCCr試験実施法(60分法)

CUAおよびCCr試験実施法の表

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 97, 2018

痛風(痛風関節炎)の診断3)

痛風は、関節内などに沈着した尿酸塩結晶が引き起こす関節炎または滑液包炎です。診断には、病歴の聴取、関節所見の診察が基本であり重要です。たいていの場合、臨床像から比較的容易に診断できます。通常、痛風は❶中年男性に好発、❷24時間以内にピークに達する急性単関節炎、❸下肢(特に母趾中足趾節〈MTP〉)関節の罹患、❹10日ほどで自然軽快し発作間歇期がある、❺背景に高尿酸血症の存在、❻無治療なら次第に発作が頻発・慢性化し、痛風結節を生じる、などの特徴的臨床像を示します[図2]

痛風発作は比較的短期間で消えるため、発赤腫脹などの典型的な関節炎症状が診断時にはすでに消失していることもあります。大関節の発作例や発作の重積した多関節炎などの非典型的な症例では鑑別診断が必要な場合もあります。発作中の血清尿酸値は発作前より低いこともあり診断的価値は高くありません。その機序としてはIL-6などの炎症性サイトカインが腎尿細管に作用し、尿酸排泄を促進させることや発作により患者が一時的に禁酒などの節制をした結果などが考えられます。

鑑別診断は、関節炎なのか周囲の炎症なのかを区別するため、触診または関節エコーやMRIの画像検査を行います[図3]。確定診断は、関節液中の白血球に貪食された尿酸塩結晶の検出を同定することです。

図2
痛風の臨床像
a:MTP関節の痛風発作、
b:手足の多発痛風結節

痛風の臨床画像

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 100, 2018

図3
関節エコーにおける
関節軟骨表面の尿酸塩結晶沈着
(double contour sign)

痛風関節エコー画像

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 100, 2018

KEYWORD

double contour sign(DCS)

近年、超音波検査で非侵襲的に関節に蓄積した尿酸塩結晶沈着の可視化が可能となっています。double contour signとは、関節軟骨の表面にある滑膜に層状に沈着した尿酸塩結晶が特異的に認められる線状エコー像で、2重のラインとして確認できます。

日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版診断と治療社: 99-101, 2018

二次性高尿酸血症・痛風の診断4)

高尿酸血症・痛風の診断に際しては、必ず二次性高尿酸血症の可能性について検討します。基礎疾患や薬物投与など明らかな原因がある場合があります。診断に際しては、詳細な問診、服薬歴、身体所見、検査所見などから基礎疾患の存在や薬物の服用について気づくことが大切です。また二次性高尿酸血症についても病型分類が有効です。

代表的な二次性高尿酸血症を病型別に記載しています[表2、3、4]。腫瘍性崩壊症候群は緊急的対応が必要です。

表2
代表的な尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症

代表的な尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症表
HGPRT:ヒポキサンチン - グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ.
ATP:アデノシン5'三リン酸. AMP:アデノシン一リン酸. IMP:イノシン一リン酸.

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 103, 2018

表3
代表的な尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症

代表的な尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症表
URAT1:urate transporter 1.

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 103, 2018

表4
代表的な混合型二次性高尿酸血症

代表的な混合型二次性高尿酸血症表
ATP:アデノシン5'三リン酸. AMP:アデノシン一リン酸. IMP:イノシン一リン酸.

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 104, 2018

高尿酸血症・痛風・無症候性高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療5)

治療目標は、関節をはじめとする体組織への尿酸塩沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などの症状を回避することです。また、肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などの合併症にも配慮して、生活習慣を改善し、必要に応じて薬物治療を導入することで心血管病(CVD)リスクが高い高尿酸血症・痛風患者の生命予後の改善を図ることが最終的な治療目標になります。

痛風の治療5)

痛風関節炎は、血清尿酸値の急激な上昇にともなって新たに生じた結晶と、すでに関節内に沈着していた痛風結節からはがれ落ちた結晶の2つにより引き起こされる急性関節炎です。後者の場合が多く、これらの結晶を関節などから融解、消失することが痛風治療の目標になります。

そのためには血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することが重要です。尿酸降下薬の開始により急激な血清尿酸値の低下が誘因となる場合も多く、痛風患者に対する尿酸降下薬の投与は、痛風関節炎を初めて起こした患者では関節炎を完全に鎮静化してから開始すべきであり、尿酸降下薬はできるだけ、最小量から開始すべきです。また必要に応じてコルヒチンカバーを併用するようにします。

痛風関節炎を繰り返す患者や痛風結節を認める患者は、生活指導を行ったうえで、薬物療法の適応となり、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとされます。尿路結石の既往がある患者または尿路結石を保有する患者には尿酸生成抑制薬を投与して尿中の尿酸排泄を抑制する必要があります。

無症候性高尿酸血症の治療5)

痛風関節炎をきたしていない無症候性高尿酸血症に対しての薬物治療の導入は、尿路結石を含む腎障害や心血管病のリスクと考えられる高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症を有する場合は、血清尿酸値8.0mg/dL以上を一応の目安としますが、現時点で得られているエビデンスや薬物の副作用について情報を患者さんに示し納得の上で開始することが望ましいとされます。また合併症を有しない場合は、血清尿酸値9.0mg/dL以上を目安とします。合併症を有する無症候性高尿酸血症の場合は、合併症の治療を優先します。この際、尿酸降下作用を有する薬物を選択することで血清尿酸値の低下を図ることができます。すなわち、高血圧では、ロサルタンカリウム、高LDL血症ではアトルバスタチン、高中性脂肪血症では、フェノフィブラート、糖尿病ではSGLT2 阻害薬やピオグリタゾンなどを選択するとよいとされています[図4]

図4
高尿酸血症・痛風の治療アルゴリズム

高尿酸血症・痛風の治療アルゴリズム図

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 22, 2018

尿酸降下薬の種類と選択6)

尿酸降下薬には、尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬、尿酸分解酵素薬があります。

尿酸生成抑制薬

尿酸生成抑制薬には、キサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬があり、アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットがあります。フェブキソスタット、トピロキソスタットは、アロプリノールと異なり、胆汁からの排泄経路を有するため中等度までの腎機能低下患者に対しても減量の必要なく使用可能です。ただし、すべての尿酸生成抑制薬にメルカプトプリン水和物またはアザチオプリンとの相互作用があり、フェブキソスタット、トピロキソスタットは併用禁忌となっています。

尿酸排泄促進薬

尿酸排泄促進薬は主に腎臓の尿酸トランスポーターの作用を修飾します。尿酸トランスポーター1(URAT1)阻害薬としてベンズブロマロン、ロサルタン、ドチヌラド、7)有機体トランスポーター阻害薬としてプロベネシド、作用機序不明ですがブコロームなどがあります。ベンズブロマロンは、厚生労働省の勧告により投与開始後少なくとも6ヵ月間は、定期的に肝機能検査を行うこととされており、十分な観察のもとで初期投与を行う必要があります。

またCYP2C9阻害作用があるためワルファリンを含む薬物相互作用に留意する必要もあります。当初は降圧薬として開発されたアンジオテンシンII受容体拮抗薬のロサルタンにもURAT1阻害作用が確認されています。また高脂血症薬であるフェノフィブラートにも同様の作用が確認されています。ドチヌラドは、腎臓の近位尿細管に存在する尿酸トランスポーター1(URAT1)を選択的に阻害する、選択的尿酸再吸収阻害薬として、2020年に新たに発売されました7)

尿酸排泄促進薬を使用する際には尿路結石予防のため、尿路管理を十分に行う必要があります。1日尿量が2L以上になるように水分を十分に摂取させ、尿をアルカリ化させるための食品摂取やクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物錠の投与も検討する必要があります。

尿酸分解酵素薬

尿酸分解酵素薬は、腫瘍崩壊症候群に対してラスブリカーゼのみに適応があります。腫瘍崩壊症候群は、腫瘍細胞を化学療法などで急激に破壊することで、尿酸が増えたり電解質バランスが崩れたりした結果、循環不全や急性腎不全などが生じ、多臓器不全をもたらす病態です。

急性痛風関節炎(痛風発作)の治療

急性痛風関節炎(痛風発作)の治療8)

急性痛風関節炎(痛風発作)は薬物療法の適応です。治療はできるだけ早期に開始し、軽快したら中止します。主な治療薬は3種類あり、急性痛風関節炎の経過(発症からの経過時間を含む)、重症度、薬歴(これまでの抗炎症治療の副作用歴、あるいは有効性)、合併症、併用薬を考慮して選択します。強い関節炎がある場合は、2薬併用も考慮します。薬物療法以外の治療として、局部の挙上と負担を避けること、局所を冷却させ疼痛を減弱すること、禁酒などがあります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)

NSAIDは、できるだけ早く内服を開始し、十分量を用いることが重要です。高用量のアセチルサリチル酸は尿酸排泄促進作用があり、血清尿酸値を低下させるため急性痛風関節炎には用いません。NSAIDの副作用としては、胃腸障害、腎障害、高血圧、中枢神経系症状、肝機能異常、心血管イベントの増加があります。胃腸障害のある患者では、状況に応じてプロトンポンプ阻害薬の併用を考慮します。胃潰瘍の既往や抗凝固薬を用いている患者にはNSAID以外の薬剤を用いるベきとされています[表5]

表5
痛風関節炎に適応があるNSAID

痛風関節炎に適応があるNSAID表

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 107, 2018

コルヒチン

コルヒチンは、発症12時間以内に1mg、その1時間後に0.5mgを投与します。翌日以降に疼痛が残存する場合は、0.5〜1mg/日を投与し、改善したら速やかに投与を中止します。
コルヒチンは腎障害や肝機能障害がある場合には、注意が必要です。GFR30mL/分未満での安全性は確立していません。コルヒチンの代謝と排泄にはCYP3A4とP-糖蛋白(P-gp)が関与します。コルヒチンの医薬品インタビューフォームに記載されているCY-P3A4、P-gpを阻害する薬剤は[表6]の通りです。表6以外にもタクロリムスに同様の阻害作用があり、クラリスロマイシン、エリスロマイシンはコルヒチンとの併用を避けるべきであるとされています。また副作用は消化器症状が多く、頻度は少ないですが重篤な副作用として、骨髄抑制、横紋筋融解症、末梢神経障害等があります。急性痛風関節炎が頻発している場合には、尿酸降下薬開始後にコルヒチン0.5〜1.0mg/日を3〜6ヵ月間併用するコルヒチンカバーが用いられます。この場合、コルヒチンの投与が長期に及ぶため、合併症や併用薬に十分注意すべきです。

表6
コルヒチンとの併用を注意すべき薬剤

コルヒチンとの併用を注意すべき薬剤表

経口グルココルチコイド

経口グルココルチコイドはプレドニゾロン換算で30mg/日を目安として5日間程度投与します。経口投与のほかに、関節内投与、筋肉内投与、静脈内投与も可能です。経口プレドニゾロンは、腎機能低下例などの副作用により、NSAIDが使いにくい症例にも有効です。ただし糖尿病や感染症、術後の場合は注意が必要です。

痛風関節炎の予防8)

尿酸降下薬を開始してから痛風関節炎が生じることがあります。これは血清尿酸値の低下により関節内の結晶がはがれるためです。患者にはその説明を行い、尿酸降下薬を適切に投与することにより徐々に溶解すること、投与直後に結晶が消失するわけではないので、急性痛風関節炎が起こりうることを伝えます。尿酸降下薬は低用量から開始し、徐々に増量するようにし、急性痛風関節炎が起こったときのために抗炎症薬を頓服で使用するように指導します。

痛風結節の治療8)

痛風結節は、尿酸降下薬により血清尿酸値を長期間しっかりと低下させることで縮小、消失、再発防止が可能です。治療目標値は5.0mg/dL以下を目標とすることが勧められます。

  • 1)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 92-94, 2018
  • 2)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 95-97, 2018
  • 3)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 99-101, 2018
  • 4)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 102-104, 2018
  • 5)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 22,114-117, 2018
  • 6)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 110-113, 2018
  • 7)Taniguchi T, et al. J Pharmacol Exp Ther 2019; 371: 162-170
  • 8)日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 106-109, 2018