実地診療活躍する
管理栄養士

#01  医療法人 二田哲博クリニック
[福岡姪浜・福岡天神]

管理栄養士/スタッフゼネラルマネジャー
小園 亜由美 さん

管理栄養士/スタッフゼネラルマネジャー
小園 亜由美 さん

糖尿病の初診では必ず栄養指導を実施

 二田哲博クリニックは、理事長のふた哲博てつひろ先生が2001年に福岡市の住宅街である西区姪浜めいのはまで開業し、2011年に分院を繁華街である中央区天神に開院しました。いずれも糖尿病と甲状腺疾患を専門にしており、医師5名・スタッフ43名の体制で、姪浜本院で1日に約200名、天神分院で約150名を診療しています。糖尿病のある患者さんは基本、全員に栄養指導を行っており、管理栄養士2名が生活指導も含めて担当しています。外来栄養指導料基準に則り、初回が30分、2回目以降は20分を基本に実施しています。

栄養指導ではなく「カウンセリング」

 薬物・食事・運動、3つの糖尿病治療の基本のうち薬物療法を除いた食事=食べる、運動=動くは生活そのものを見直すことで整えていきます。特に決して欠かすことのできない「食べる」ことについて私たち管理栄養士は「栄養指導」を行います。糖尿病の診断があった初回に当院では必ず「栄養指導」を受けていただいているのですが、ほとんどの人が「身構えて」います。誰もが完璧な食生活をしているわけではありません。しかし患者さんにしてみれば、不摂生が原因で糖尿病になってしまった→管理栄養士に呼ばれた→怒られる/否定されると考えるのは自然なこと、当然身構えます。ですが話し終わる頃には「また話を聞きたい!」という言葉をいただきます。なぜでしょう。それは「指導ではなくカウンセリング」を行っているからです。指導とは教え導くことです。何十年も続けてきた習慣を否定され、正しいことを示されても受け入れられるでしょうか。健康を取り戻すはずの栄養指導が、好きなものを取り上げられるように感じられてしまっては本末転倒です。ですから、私はその生活から人となりや人生観まで知り、本当の意味でのその人の身体にあった食事を見つけ出し、続けられるようにすることを本人と一緒に探すようにしています。食べ物を口に入れることだけが食事ではありません。何をいつどのようにどれだけ食べるのかは生活に深く関係しています。ですから、私はひとりひとりの生活の様子を重視しているのです。私が行っているのは「食事カウンセリング」です。

具体的に示すのが管理栄養士

 「食事はバランス」と言います。このバランスとは何と何のことでしょう。摂取するエネルギー量=カロリーと栄養素のことです。栄養素のバランスを取るヒントとしてオリジナルの「食事バランスシート」(図1)で、毎食、主菜・副菜・主食の3つを揃えることの大切さを伝えています。その際、患者さんに必要な情報を書き込んで渡しています。同時に医師から指示のあった総カロリーについても、具体的に何に気を付ければよいのかを明確に示すようにしています。カウンセリングのなかで「お菓子は1個までにする」「ゆっくり食べる」「朝ご飯を食べる」といった本人にとって実現できそうな小さな目標を立てて次回までの宿題にします。それがオリジナルの「食事運動カレンダー」(図2)です。毎日目標ができたらマル、できなければバツをつけてもらい次回来院の際に持参してもらっています。全部マルがつくことが望ましいのですが、バツがあっても構いません。成績を競うのではなく自分で立てた目標に日々向き合っているのかどうかという点が重要だと考えています。ですからバツが多くても否定はせずにむしろより確実にできることを探す手がかりにしています。そうして小さな達成感を日々積み重ねていくことを習慣化やモチベーションを育てるようにしています。半年も続けていると患者さん自身から「今度はこんな目標でやってみたい」と提案されることも多くなるほどです。そんな積極的な患者さんは具体的に何をどうすべきかをつかみはじめています。ひとりひとりの体調・状態を医学的な立場で把握したうえで、本人の希望をどう無理なく叶えていくかが管理栄養士の責務だと考えています。

図1食事バランスシート

小園さん 提供

図2食事運動カレンダー

小園さん 提供

1人の例外もなくみんな頑張っている

 当院では、通院中の患者さん全員を対象に毎月食事療法・運動療法を頑張った3名表彰する「じぶんみがきグランプリ」を2004年から続けています。選考は看護師、臨床検査技師、管理栄養士で行い、受賞した人は院内やWebサイトに掲示しています。ひとりひとりに選考者がなぜ選んだのか、どのようなことが素晴らしかったのかを丁寧に書いた賞状を本人に手渡すようにしています。糖尿病の治療で最も重要なのは「継続」です。薬にしても食事にしても運動にしても続けることが大切なのですが、アタマではわかっていてもなかなか続けられないものです。そんななか、自分で目標を決めコツコツと続けて改善している人がいることを示すことは本人だけではなく、同じ糖尿病に向き合っている他の患者さんたちの心のよりどころになります。何よりも頑張っている姿を私たち医療スタッフがしっかり見ている、応援していることを伝えるためにもこの賞状は大変役立っています。

適材適食

 私は野菜ソムリエ上級プロの資格を取得しました。私自身が野菜を好きなこと、そして大好きな野菜には身体を元気にしてくれる栄養素がたくさん詰まっていることを患者さんに伝えるうえでとても役立っています。春夏秋冬それぞれの旬の野菜とそれを楽しむ簡単なレシピをお伝えしています。また健康運動指導士の資格も取得しています。食べるだけでは健康な身体を創ることはできません。適切な運動の話を患者さんに伝えるためにとても役立っています。どちらも患者さんに有益な「カウンセリング」を行ううえで必要と考え取得しました。また院内だけに留まらずSNSで情報を発信しています。2018年から毎日更新を続けているBlog「適材適てきざいてきしょく”」では自分に合った食材を(=適材)、自分の身体に合った食べ方で(=適食)を基本に、プライベートも含めていろいろな情報を発信しています。

医療法人 二田哲博クリニック[福岡姪浜] 院長

下野 大 先生からのコメント

 糖尿病や脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症の治療において、「どのような食事をとるか」という問題はとても大事です。しかし、食事をどのように工夫すればよいのか具体的に説明することはとても難しいのです。食事についてのアドバイスをするためには、目の前の患者さんの背景や現在の食事について、深く知ることが大事です。そして、現実的に取り組める工夫を具体的にわかりやすく提案する必要があります。栄養のプロである“管理栄養士”によるカウンセリングは必要不可欠であり、食事の改善は効果的な薬物療法を実践するうえでも重要です。
 医療機関のスタッフというと医師や看護師をイメージする方が多いのですが、実際には、管理栄養士、健康運動指導士、臨床検査技師、医療事務や医療秘書といった多職種が連携して医療サービスを提供しています。私たちはよりよいチーム医療を実践することによって、医療サービスを向上させるよう努めています。