高尿酸血症とは
生活習慣改善について
(監修)
医療法人社団泰山会赤坂中央クリニック
院長 日高 雄二 先生
帝京平成大学薬学部教授
金子 希代子 先生
高尿酸血症とは
(監修)
医療法人社団泰山会赤坂中央クリニック
院長 日高 雄二 先生
帝京平成大学薬学部教授
金子 希代子 先生
高尿酸血症を引き起こす要因としては、内因性のプリン体合成あるいは核酸の分解の亢進と、外因性の高プリン食やアルコールの摂取があります。またプリン体の排泄には、腎臓を介する経路と消化管を介する経路がありますが、いずれの経路での尿酸クリアランスの低下も高尿酸血症の原因となります。
高尿酸血症、痛風は、生活習慣病であり、薬物療法の有無にかかわらず生活指導を行うことが重要です。生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動が基本です。生活習慣の改善は、継続性が不可欠であり、患者の意欲を高め自発性を維持するために、きめ細かな説明で患者に治療内容を納得してもらうことが大切です。治療が長期化すると中だるみやリバウンドが生じやすいので注意も必要です。またストレスや睡眠不足でも高尿酸血症や痛風発作が生じやすいことにも留意します。
BMI(肥満度指数)や体脂肪率が高くなると、それにともない血清尿酸値が高くなることが報告されています。そのため、肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待されます。食事療法としては、患者の身体活動量や肥満の有無による適正なエネルギー摂取、食材に含まれるプリン体・果糖の過剰摂取の回避、腎機能に応じた適切な飲水が勧められます。適正なエネルギーは、日本人の食事摂取基準2020年版より下記の推定エネルギー必要量を参考にし、体重の変化を用いて評価することが勧められています。
1 身体活動レベルは、低い、ふつう、高いの三つのレベルとして、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲで示した。
2 レベルⅡは自立している者、レベルⅠは自宅にいてほとんど外出しない者に相当する。レベルⅠは高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている者にも適用できる値である。レベルⅢは移動や立位の多い仕事への従事者、または、活発な運動習慣を持っている者に相当する。
注1:活用に当たっては、食事摂取状況のアセスメント、体重及びBMIの把握を行い、エネルギーの過不足は、体重の変化又はBMIを用いて評価すること。
注2:身体活動レベルⅠの場合、少ないエネルギー消費量に見合った少ないエネルギー摂取量を維持することになるため、健康の保持・増進の観点からは、身体活動量を増加させる必要がある。
伊藤 貞嘉、佐々木 敏 監修:日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書, 第一出版 2020, p.84 より一部抜粋、改変
プリン体の過剰摂取は、血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを高めるため摂り過ぎないように指導し、食材によりプリン体含有量が異なることを考慮して食事指導をします[表1]。プリン体の1日の摂取量は400mg程度になるように推奨されています。食材中の濃度が高くても少量に抑えればよく、逆にビールなどは濃度は低くても摂取量が多ければ影響は大きくなります。プリン体は水溶性なので高プリン体の食材であってもプリン体が溶出した煮汁を飲み干さなければ摂取量を抑制できます。
表1
食品中のプリン体含有量 (100gあたり)
日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 142, 2018
アルコール摂取と痛風発症のリスクに関する17の疫学調査をまとめたメタアナリシスの結果、アルコール摂取量により痛風の発症リスクが以下のように高まることが報告されています。さらに、国内の前向き研究においても、アルコール摂取量は高尿酸血症のオッズ比を高めることが報告されています。
血清尿酸値への影響を最低限に保つ摂取量の目安(1日あたり)は、下記の通りです。
ショ糖(砂糖)の構成成分である果糖や、キシリトールは代謝される際にプリン体分解亢進をきたし血清尿酸値を上昇させます。果糖を多く含む甘味飲料や果物ジュースは控えるように指導します。
逆にコーヒー、チェリー、ビタミンC、乳製品(特に低脂肪乳製品)は、痛風リスクを低減すると報告されています。
痛風の重要な合併症である尿路結石の予防には、尿アルカリ化と飲水が有効です。尿のアルカリ化には野菜や果物が推奨され、飲水量は1日の尿量を2,000mL以上に保つことを目標にします。ただし高尿酸血症・痛風に慢性腎臓病(CKD)を合併した場合の飲水量は慎重に設定する必要があります。
運動は、肥満を是正しメタボリックシンドロームを改善することで血清尿酸値を低下させることが期待されます。その反面、エネルギー代謝(ATP分解)による尿酸産生亢進と腎血流量低下、および乳酸産生増加による尿酸排泄低下の両方により高尿酸血症をきたします。特に短時間での激しい運動といった無酸素運動で血清尿酸値は上昇しますが、有酸素運動では上昇しません。具体的には、歩行、ジョギング、サイクリング、社交ダンスなどの有酸素運動を脈が少し速くなる程度に行います。これらの運動を少なくとも10分以上、合計1日30〜60分くらい行うとよいとされています。痛風の既往がある場合は、関節に負担がかかることにより痛風を誘発する危険性があります。また痛風患者には虚血性心疾患の合併も懸念されるため、運動強度の決定は慎重に行います。発汗による脱水予防のために、運動前後の適切な水分補給も重要です。
合計 1日 30〜60分くらい
1)日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 141-144, 2018